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2007年02月18日(日) 00時00分

【広域】 「賃金払って」申告急増 外国人の技能実習生 中日新聞

 未払い賃金などの支払いを求めて外国人技能実習生が岐阜労基署へ申告する件数が、今年に入って急増している。15件を数え、すでに昨年の約9割に達した。解雇による強制送還を恐れ、泣き寝入りする実習生も少なくない。県内の実習生は2005年度時点で3620人おり、全国で最も多い(国際研修協力機構調べ)。安価な労働力として期待されている側面もあり、外国人研修・技能実習制度のひずみが目立ってきた。 (坂田奈央)

 「会社が残業代を支払おうとしない」。1月、岐阜市内の縫製会社で約3年間働いた中国人技能実習生3人が、残業代支払いを求めて同署に申告した。

 3人は31−36歳の女性。午前8時から午後9時40分まで(休憩時間40分、残業約5時間含む)働いた後、内職2時間を強いられる毎日。休日は2週に1日。「働いた分だけもらえると思ってた」(実習生)賃金は、時給で県の最低賃金675円の約半分など、本来の金額にはほど遠いものだった。パスポートに加え、印鑑、通帳は会社保管となっていた。

 岐阜労基署は1人あたり約330万円の労働債権があると縫製会社に勧告した。しかし同社は「支払えない」と未払い賃金が残ったまま自己破産を申し立てた。破産申立代理人の弁護士は「資産より負債額が多いため一般的に自己破産は可能」と話しており、3人は国の立て替え制度に頼るほかすべがない。

 背景には、不当雇用に結びつきやすい制度自体の疲弊、その制度にすがるしかない縫製業界の苦しい実態がある。3人の実習生はそれぞれ中国では縫製会社に勤めていた。「日本の工場技術を学びたかった」「企業は賃金を払う責任がある。許せない」「自己破産という抜け道を見逃していいのか」。怒りを胸に、本来の賃金を受け取れないまま、帰国した。

 【外国人研修・技能実習制度】 技術移転により開発途上国の人材育成に貢献しようと、1993年に始まる。研修1年、技能実習2年で最長計3年の日本滞在が可能。技能実習では、実践的な技術を習得してもらうために雇用関係を結ぶが、研修中の就労は認められない。協同組合など団体が受け入れ組織となり、各企業に配置するパターンが一般的。対象職種は繊維関係など62に限定。


http://www.chunichi.co.jp/00/gif/20070218/lcl_____gif_____001.shtml