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2007年02月17日(土) 12時02分

金沢大・偽証告発問題 不起訴処分朝日新聞

 ◆告発医師「おかしな話」◆
 ◇教授・講師「当然の結果」◇

 金沢大付属病院における臨床試験のインフォームド・コンセント(十分な説明と同意)をめぐる訴訟で、患者の医療記録の改ざんや偽証があったとして、同病院講師の打出喜義医師(54)が異例の内部告発に踏み切ってから10カ月。金沢地検が出した答えは「嫌疑不十分」だった。告発されていた教授(59)と講師(45)は「当然の結果」と強調、打出医師は「認められず残念だ」と落胆の色を見せた。

 金沢地検の吉池浩嗣次席検事は16日、不起訴処分としたことを明らかにしたうえ、「告発で偽証とされた証言は、前後の文脈などから判断して虚偽とはいえない」と説明。また、裁判で提出された大学側の症例登録票が改ざんされていたとの指摘については「仮に改ざんがあったとしても、書類は医師が私的に作成したもので公文書ではなく、犯罪にはあたらない。改ざんの事実があったとも認められない」との認識を示した。

 この決定に対し、教授は「当然のことを当然のこととして認めていただいたものと思っている」とするコメントを発表。講師も朝日新聞の取材に対し、「患者は重複がんで、卵巣がんの標準的な治療の試験の対象にはできなかったため、登録を取り消した」と経緯を説明。改めて偽証はなかったと疑いを否定したうえで、「今後も日々の診療に全力を尽くしたい」と話した。

 打出医師は「遺族による民事訴訟の判決では事実上改ざんを認定し、大学も十分な説明がないまま症例登録したことを認めて患者たちに謝罪した。地検が偽証を認めないとはおかしな話だ。症例登録票は臨床試験の根幹をなし、裁判に証拠提出された重要な書類。公文書でないと退けるのは疑問に思う」と話した。

 金沢大は「個人同士の訴訟案件であり、コメントは差し控える」としている。

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 【金沢大付属病院がん治療訴訟をめぐる偽証告発問題の経緯】

 卵巣がんで入院していた県内の女性(当時51)が十分な説明がないまま比較臨床試験の対象になったとして、遺族が99年6月、国(後に金沢大が承継)を相手に約1千万円の損害賠償を求めて提訴。一審・金沢地裁、二審・名古屋高裁金沢支部とも無断で女性を試験の対象にしたと認定し、大学側に支払いを命じた。06年4月に最高裁で判決は確定した。直後、打出医師が「裁判で大学側の証人だった同僚の教授と講師が医療記録を改ざんして『女性は試験の対象ではなかった』と虚偽の証言をした」として、偽証などの疑いで金沢地検に告発。地検は翌月に受理した。

http://mytown.asahi.com/ishikawa/news.php?k_id=18000000702170003