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2007年02月17日(土) 00時00分

米議会、為替操作の制裁審議へ 日本も視野朝日新聞

 米国議会は、中国などによる安価な輸出に制裁関税をかける新たな法案を審議する。通貨・人民元の過小評価が輸出価格を実質的に安くしているとの声を受けた動きだ。法案は、中国政府による為替操作を輸出補助と認定し、世界貿易機関(WTO)も禁じる輸出補助に対し、相殺できる関税を発動できる内容にする見通し。最近の円安も対象になる可能性が懸念され、日本にとっても無視できない状況だ。

 15日は下院貿易小委員会が法案審議の準備で「中国貿易公聴会」を開いた。議会は保護主義的な傾向が目立つ民主党が今年から主導権を握っており、委員長は、深刻な業績不振が続く米自動車業界の立場も代弁するレビン議員(民主)。対日貿易摩擦が激化した90年代半ばにかけて舌鋒(ぜっぽう)鋭く日本を批判したことで知られる。13日発表された06年の対中貿易赤字が前年比15%増で過去最高の2325億ドルに達したこともあり、公聴会では業界の不満が噴き出した。

 「(スパイ映画・007シリーズの)最新作カジノ・ロワイヤル、硫黄島からの手紙、(レオナルド・ディカプリオ出演の)ブラッド・ダイヤモンド……。すべての米国映画が瞬時に安い海賊版になるが、中国政府は外国会社がつくった映画を一般上映する許可本数さえ抑制する。市場参入もできず、海賊版は横行するばかり」(映画業界)

 「原材料だけの推定コストが69セントの中国製『やっとこ』が、米国では49セントの卸値で売られる。中国政府の巨額な補助金が超安価販売を可能にしている」(製造業者団体)

 「01年以来の安値攻勢により業界全体で65の工場が閉鎖され、1万8000人の雇用が打撃を受けた」(ベッドメーカー)

 鉄鋼や製薬、自動車部品、出版も含む各業界の代表が中国政府による輸出補助や知的財産権の保護不足の実情を切々と訴え、交渉だけでは成果が乏しいとしてWTO提訴や議会主導の新法案による制裁などを求めた。

 「中国政府は圧力のかけ方次第で対応を変える」「牙のある法案が必要」などの指摘を受け、レビン委員長は「来年は北京五輪が開かれる。それまでに劇的な変化を中国に求めたい」と審議を急ぐ姿勢を強調した。

 法案は人為的な為替操作への歯止めが狙いで、人民元などの過小評価で対米輸出価格が安くなった分を補助金相当とみなし、それを相殺させる関税をかける内容になるとみられる。対象は「中国も含む」と幅をもち、日本にも適用可能との見方もある。米通商代表部(USTR)は「輸出補助金はWTOで禁じられている」と中国をWTOに訴えているが、法案は即効性のある関税発動を求めようとしている。

http://mytown.asahi.com/usa/news.php?k_id=49000000702170014