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2007年02月16日(金) 00時00分

米ファンド、サッポロ買収強欲手口…ボロ儲け再現へZAKZAK

大量保有報告書による 

 サッポロビールの持ち株会社サッポロホールディングス(HD)に買収を打診した米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド。現在約18%の保有比率をTOB(株式公開買い付け)により、66.6%(議決権ベース)に引き上げるとサッポロに提案した。スティールは友好的な買収をにおわすが、市場では「三十数億円もの利益を得た明星食品騒動と同じパターン」(兜町筋)と、スティールの姿勢を冷ややかに見つめている。

 「投資は売却などの出口を念頭に置いて戦略を練るのが常識。スティールの提案も経営権の取得ではなく、サッポロの株式の売却に向けた布石だろう」とは株式アナリスト。

 スティールは割安な株式を買い集め、投資先に圧力をかける攻撃的な投資手法が特徴。昨年秋には明星食品に敵対的買収を仕掛け、救済に現れた日清食品に保有する明星株を譲渡し、約36億円の利益を上げた。「この成功に味をしめたスティールは、サッポロなど他の投資先にも同じ手法を使うはず」(投資銀行)との見方が有力だった。

 「結局、明星食品騒動と同じことをサッポロに仕掛けたわけで、今回のサッポロにも、明星食品での日清食品のようなホワイトナイト(白馬の騎士)の登場などを念頭におくなど複数の“出口”を考えているのは当然」と先のアナリストはみる。

 今回の提案でスティールが提示した買い付け価格をみてもその側面がうかがえる。

 スティールがサッポロに提案した文書では、1株825円(15日終値791円)でのTOBを検討する考えを示している。この価格は、15日までの1カ月平均終値に12%のプレミアム(価格上積み)を付けたもので、明星に仕掛けたTOB価格のプレミアム14%と似たような水準でもある。

 「プレミアムの水準では30%が普通だが、スティールの提案した価格は割安。サッポロに対するホワイトナイトを出やすくするためともみられる」(市場筋)との声もある。

 サッポロHDは、スティールから今回の提案に関する詳細を聞いた上で、外部専門家らの助言も踏まえて対応を決める方針。また、買収条件の改善交渉や株主への代替案を提示することも検討するとし、昨年2月に導入した20%以上の株式取得を目指す買収者に対し、新株予約権で対抗する防衛策の発動に向けた準備にも入るとみられる。

 すでに18.64%の株式を保有しているスティールにとって、株式が大幅に希薄化する防衛策の発動は「相当な脅威」(投資銀行幹部)のため、「今後、サッポロとスティールは敵対的買収と防衛策発動を相互にちらつかせる神経戦に入る」(関係者)との指摘もある。

 一方、今回のスティールの提案を受けて、ビール業界ではさまざまな観測が流れているが、アサヒビールは16日、同社がサッポロHDに経営統合を提案したとの一部報道について、「事実無根であり、統合を提案した事実もない。当社の酒類事業は現在の体制で成長を目指す」(広報部)とコメント。アサヒビールの取引銀行幹部も「まったく知らない」と否定した。また、サッポロHDも「記事はまったくの憶測で書かれたもの」(広報室)とした。

【スティール保有の主な日本企業の株式と保有比率】

アデランス24.69%

サッポロ18.64%

江崎グリコ14.44%

シチズン時計10.52%

ブルドックソース10.15%

日清食品9.28%

ブラザー工業9.19%

ZAKZAK 2007/02/16

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_02/t2007021626.html