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2007年02月16日(金) 22時47分

柏屋の破産申し立て 整理回収機構読売新聞

 整理回収機構は15日、日光市川治温泉の老舗温泉旅館「湯けむりの里 柏屋」=写真=を経営する柏屋ホテル(片山則夫社長)の破産手続き開始を宇都宮地裁に申し立てたと発表した。これを受け、同地裁は同日、保全管理命令と包括的禁止命令を出した。今後、保全管理人は会社を清算せず、新たなスポンサーを探して事業再生を目指す方針だ。

 負債総額は約35億円とみられる。旅館営業はこれまで通り継続される。機構によると、事業譲渡先として、すでに数社が関心を寄せているという。

 保全管理人に選任された白井裕己弁護士は記者会見で、「破産手続きだが、目的は事業再生だ」と強調した。片山社長は経営責任を問われ退任する見通しで、従業員の雇用は「できるだけ継続する」(白井弁護士)としている。

 東京商工リサーチ宇都宮支店によると、柏屋は川治温泉最大級の温泉旅館で、バブル期には年10億円近くの売上高を計上。しかし、バブル崩壊後の97年に新館を増築するなど、経営体力を超えた過剰な設備投資が響き、債務超過に陥った。

 機構は06年2月、柏屋の主力取引銀行だった足利銀行から約28億円の債権を譲り受け、再生に向けて柏屋側と協議を続けていたが、最終的に自力再建は難しいと判断した。

 一般的に、破産手続きは、事業を停止して会社の残余財産は売却するなどし、会社は清算される。しかし、今回のケースでは、地裁に営業継続を申請した上で、会社を清算せずに営業を続ける。会社更生法や民事再生法による事業再生に比べ、手続きが短期間で済むという利点がある。

 柏屋は、決算情報など基本的な経営情報を開示せず、昨年には預金差し押さえや約8300万円の税金滞納も発覚した。機構は、会社更生法に基づく事業再生も検討したが、売り掛け債権を差し押さえられれば営業停止に追い込まれかねないと判断。経営陣の同意を得ないまま、「やむなく破産手続きを取った」(緒方孝則・整理回収機構常務執行役員)という。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tochigi/news001.htm