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2007年02月16日(金) 22時37分

業者との癒着解明へ朝日新聞

 ■県庁裏金 県警捜査
   マージンにも注目

 県庁の裏金問題は、刑事事件に発展した。県警は、県が告訴していた元課長補佐とともに、裏金づくりに協力していた文具会社の社員も逮捕。裏金をめぐる県職員と業者の癒着の実態を解明する構えだ。ただ、刑事告訴されている県職員は1人だけ。県職員からは「これではトカゲのしっぽ切り」との声も出ている。

  ・刑事告訴1人だけ「トカゲのしっぽ切り」の声

 県警の調べでは、逮捕された元県政策企画課長補佐の山下哲也容疑者(46)は、別の部署の旧知の経理担当者に、課の事務用品を購入すると偽り、予算を引き出した。そのために、文具会社員の福田英臣容疑者(39)に架空請求書を作らせ、さらに文具会社の裏金専用の銀行口座も利用していたとされる。
 両容疑者が知り合ったのは、山下容疑者が県庁に入庁した後。福田容疑者は調べに対し「引き出した金を、私的なことに使うのはわかっていた」と供述しているという。
 ある県幹部は「裏金担当者と業者は一蓮托生(いちれんたくしょう)。裏金を使う時に、かなりの割合を業者にマージンとして渡していたケースもあった」と明かす。
 県警は、今回の事件でも業者側にマージンが渡っていた可能性もあるとみているが、「業者の目当ては金だけではなく、営業の将来を考えて、関係をつくろうとしたのではないか」(捜査関係者)との見方もあり、今後、金の流れの解明を進める方針だ。

 県庁の裏金問題で、県が告訴したのは山下容疑者だけ。157万円を私的流用するなど「悪質性が高い」と判断したためで、裏金を「公的」に使ったとされる他の職員については県庁内部の処分にとどめる方針だ。
 「職員と業者の癒着が、裏金の温床になったのは間違いない。今回の問題を機に一掃しなければ、また10年後には同じことが起きる」と警鐘を鳴らす県幹部もいた。
    ◇
 県警は15日午前、県政策企画課と山下容疑者の自宅を家宅捜索。山下容疑者のパソコンやファイルなどを押収した。
 立石暁副知事は「全容の解明が進むことを期待している」と述べた。

 ◆返還2億円 議会委で批判続出

 県庁の裏金問題で、県は15日に開かれた県議会総務委員会で、三役や職員、OBによる返還額が約2億円に上るとの見通しを示した。知事の諮問機関の処分検討委員会も、99年度以降にあった裏金4億円余のうち、1億6千万円に利子を加えた額を返還すべきだとする意見書を提出しており、県側は「法的根拠に基づいて出された金額」などと説明した。
 しかし、委員からは「裏金は99年度以前から続いてきたもので、総額はもっと多いはず。4億円全額を返すべきだ」「議決通りに予算を執行しなかったことは議会軽視だ」などの批判が相次いだ。
 立石暁副知事は「県民の不信感や批判を県職員一人一人が受け止め、法律的な考え方を土台に、お返ししていくことが何より重要」などと述べるにとどまり、その後の取材に対しても「処分委が示した返還額は法律的にきちんと整理した額で、前例のない厳しいもの。『最低ライン』とは受け止めていない」とし、返還額は増やさない考えを明らかにした。

 県は20日に開かれる臨時議会で、具体的な返還額や処分内容を含めた総括報告を出す予定。

http://mytown.asahi.com/nagasaki/news.php?k_id=43000000702160003