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2007年02月16日(金) 22時31分

裁判官をジャッジ/札幌弁護士会朝日新聞

■思考クリアで勤勉/自分に酔った判決

■「外の目」で司法身近に

 「尋問中何度も寝ていた」「判決は自己陶酔型」——。ふだんは人を裁く立場の裁判官の仕事ぶりに、独自の評価を下そうという取り組みを道内の弁護士らが進めている。市民が刑事裁判に参加する裁判員制度を目前に控え、裁判官といえども外部の目にさらし、司法を身近に近づけようという取り組みだ。

 札幌弁護士会(会員数約410人)と函館弁護士会(同約30人)が地元地裁の裁判官を対象に取り組んでいる。

 札幌弁護士会は札幌地裁の民事、刑事の裁判官計22人(所長除く)について、弁護士にアンケートし、50人から回答があった。各裁判官が「記録をよく読み検討しているか」「関係者に親切に接しているか」など、民事16項目、刑事15項目を、5点満点で評価した。

 その結果、民事、刑事ともに裁判官への総合評価は平均3・5点。最高は4・1点だが、最低で2・3点の裁判官もいた。

 評価の理由を尋ねたところ、「丁寧でよい裁判官」「思考がクリアでよく勉強している」などとみなされた裁判官もいる一方、「記録は読まないし、争点を整理する能力もない」「保守的で消費者に厳しい」「事なかれ主義」などの批判を受けた裁判官もいる。

 ほかにも、「思いこみが激しい」「判決に説得力がない」「当事者の気分感情を無視して性急に結論を出すことがある」などとする声もあった。

 札幌弁護士会はこの評価内容を地裁所長に提出している。毎年8月に実施される裁判所による人事評価に加えて、配置や昇進に役立ててほしいという考えからだ。「裁判官本人から問い合わせがあれば、評価について直接知らせる」とも所長に伝えたが、打ち返しはまだないという。

 裁判官の人事や昇進は地裁所長や高裁長官らの評価でおおむね決まる。「国民の方を向いて仕事していない裁判官もいるのではないか」という思いも弁護士らにはあり、この「外部評価」によって、透明、公正な評価につなげたい考えだ。

 こうした試みは日本弁護士連合会(日弁連)も各地の弁護士会に呼びかけたが、地域による温度差があり、大阪や福岡などが熱心という。道内の弁護士らは取り組みをさらに広げようと、今年は旭川、釧路の弁護士会も交え、札幌高裁と各地裁、家裁の裁判官も対象に評価を実施することにしている。

《キーワード》
◆裁判員制度   09年5月までに導入される。刑事事件の審理に、選挙人名簿から無作為で選ばれた市民6人が裁判員として参加し、裁判官3人と一緒に有罪・無罪や刑罰を決める。対象は殺人、強盗致傷などの重大事件。評決は多数決だが、裁判官、裁判員の両グループから最低1人の賛成が必要。刑事裁判の仕組みを大きく変えることから、検察、弁護士、裁判所の法曹三者が準備を進めている。

http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000000702160006