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2007年02月16日(金) 00時00分

就任後も波乱含み? 厚木市長選選挙違反事件 東京新聞

 厚木市長選で初当選した小林常良氏(57)派の選挙違反事件は、これまでに選対幹部ら四人が公職選挙法違反(供応買収)容疑で逮捕される展開に発展。供応買収が行われたとされる宴会に同席していた小林氏には、捜査の行方次第で、連座制が適用される可能性も出てきた。一部の市議からは就任前から“辞めろコール”が飛び出すなど、初登庁を二十三日に控え、早くも市政混乱の気配が漂い始めている。 (岸本拓也)

 「今後、一体どうなるのか分からず、不安に感じる職員も少なくない」。ある市幹部は、事件が市政に与える影響を測りかねた様子でこう話す。市が直面している課題は三月議会に提出される新年度当初予算案だ。市長選で現職の山口巖雄氏が敗れたため、新市長となる小林氏の意向で、義務的経費など最低限のものを盛り込んだ骨格予算となる見通しだが、市幹部は「最悪の事態に備えて、いろんな対応を想定しないといけない」という。

 「最悪の事態」とは、小林氏の進退がどうなるかだ。県警の調べでは、昨年十二月下旬、厚木市内で開かれた宴会で、元県議会議長の小沢金男容疑者(78)ら三人が、市内の会社経営者ら六人(うち一人を受供応容疑で逮捕)に、小林氏への投票や票の取りまとめを求めて、一人あたり二万−三万円分の飲食接待をした疑いが持たれている。

 小林氏も短時間だが、宴会に同席して「後援会活動を進めたい」などとあいさつ。後援会のリーフレットを出席者に手渡しており、県警も会の開催にあたり、同氏の関与がなかったか捜査を進めている。

 小林氏の関与がなくても、「選対総本部長」の肩書を持つ小沢容疑者が、選挙活動で重要な役割を果たしたと認定されれば、連座制が適用され、当選無効となる。市の中堅職員は「事件が長引いた揚げ句、再選挙になれば、当分は本格予算が組めず、市民生活に支障が出かねない」と嘆く。

 事件の波紋は、市議会にも広がる。市長選で小林氏を支持した地域政党「厚木ネット」(代表・前田多賀子市議)は、事件を受け、早々に当選辞退を促す声明を発表。前田市議は「市政の混乱に早く終止符を打つことが政治家としての責任だ」と話す。

 また、表向きは「捜査の推移を見守る」として静観する、山口氏を支援した保守系市議の一部は、水面下で不信任決議案などに必要な手続きの確認を始めるなど、小林氏の政治責任を問う動きを見せ、徐々に“小林氏包囲網”ができつつある。

 あるベテラン市議は「個人的な考え」と強調した上で「仮に刑事責任に問われなくても、議会として何のおとがめなしとはいかないだろう。それが不信任決議案まで発展するのか、辞職勧告や問責決議で終わるのか…」と話し、三月議会が波乱含みであることをにおわせた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20070216/lcl_____kgw_____000.shtml