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2007年02月15日(木) 00時00分

「東京抗争」再燃の恐れ…手打ちの板ばさみかZAKZAK

 指定暴力団住吉会系小林会幹部射殺事件に端を発する一連の抗争事件は、日本最大の指定暴力団山口組の最高幹部、国粋会会長が自殺するという前代未聞の事態に発展した。当事者とされる両巨大組織が和解してわずか1週間。自殺は抗争と因果関係があるのか。警視庁組織対策4課では自殺の背景について調べを進めるが、終結したはずの「東京戦争」は再燃の火種を再び抱える恐れもでてきた。

 関係者によると、抗争終結のため、山口組と傘下の国粋会、住吉会と傘下の小林会の4者がまとめた和解案には、1億円とも3億円ともいわれる「弔慰金」を山口組側が支払うほかに、山口組が国粋会の工藤和義会長(70)に何らかの処分を下す条件も含まれていたという。

 このため、かつて指定暴力団のトップに君臨していた工藤会長は、板ばさみ状態になっていたとも伝えられる。

 小林会幹部の射殺事件は当初、六本木の進出を図っていた山口組系太田会と小林会の対立の構図とみられていたが、その後の組対4課の調べや関係者の証言によると、「国粋会傘下組織が関与していた」との見方も浮上していた。

 関係者によると、国粋会内部では01年春から内紛が勃発(ぼつぱつ)。03年10月、山口組が仲裁に入ることで、工藤会長に有利に解決したという。このため、05年に山口組の傘下に入った後も、国粋会内部には工藤会長に反発する勢力が残ったともいわれている。

 一方、国粋会が山口組の傘下に入ったことで、都内の暴力団勢力図も大きく変化した。

 ジャーナリストの大谷昭宏氏(61)は「国粋会は元々、住吉会とは同じ在京団体として友好関係にあった。ところが、2005年に国粋会が山口組の傘下に入ったことで関係が崩れた」と解説する。この「盃」は捜査関係者をも「晴天の霹靂」と驚かせたという。両組織は8日に手打ちを行っているが、大谷氏は「今回の手打ちはトップ同士でケリがついただけで問題は先送りだ。今回の抗争の第2波、第3波が起こる可能性は十分ある」と指摘する。

 工藤会長の自殺という不安定要素を加え、今後はさらに不透明になってきている。

★現場の自宅は…

 自殺現場となった台東区橋場の下町の住宅街は15日午後、異様な静けさに包まれた。2階建てで質素な造りの工藤会長宅を取り囲むようにパトカー6台が止まり、捜査員はガレージにある白いベンツを重点的に調べを進めた。その様子を構成員とみられる白いジャージー姿の若者2人が見守る以外に人気はなかった。

 会長宅の向かいにあるタクシー会社で運転手を務める50代男性は、「抗争後はピリピリしていて若い衆が家の周辺を警備していた。でも和解になってからは落ち着いていたのだが」と驚いた表情。工藤会長については「いいオジサン。会えばあいさつしてくれたし、思い悩んでいる様子もなかった」と話した。

★関西弁で記者追い払い

 工藤和義会長の自殺を受け、東京都台東区千束にある国粋会本部は物々しい雰囲気に包まれた。

 本部事務所前には山梨、品川、足立、横浜といったナンバーの高級乗用車がズラリと並んだ。周辺にはスーツ姿や普段着の組関係者約20人が車内や周辺、事務所を行き来していた。

 玄関に立つ組関係者は「なんも話すことは無い。はよ帰れ!」とドスのきいた関西弁で記者を追い払った。

 事務所は日比谷線三ノ輪駅から徒歩10分、歓楽街・吉原の入り口にあたる吉原大門に建つ。

 近所に住む住民(57)は「事務所の前には普段はまったく人通りがない。今日は昼前から出入りが結構あるようだ」と話していた。

★国粋会とは

 東京都台東区千束に本拠を置く博徒系暴力団。指定暴力団・6代目山口組の2次団体で構成員は約470人。警視庁によると2005年6月現在、準構成員を含めて関東1都6県で約1060人。

 1919年に結成されて太平洋戦争の終結とともに事実上消滅した右翼団体「大日本国粋会」の復活を目指し、「日本国粋会」として58年に設立された。初代会長は森田政治氏。63年には児玉誉士夫氏の提唱する「関東会」に参加した。

 暴力団幹部の逮捕と組織解散を狙った全国警察の「第1次頂上作戦」により、65年12月にいったん解散。69年に再結成され、91年に金町一家7代目の工藤和義総長が4代目会長に就任し、「国粋会」に改称した。

 会長派と反主流派がそれぞれ別の組織と連携を模索したため、2001年から03年にかけて内部抗争が勃発。仲介役を5代目山口組の渡辺芳則組長が務めたことから山口組と接近した。05年9月には関東会の後身である「関東二十日会」を脱退したうえ、工藤会長が6代目山口組の司忍組長から舎弟盃を受けて山口組傘下となり、工藤会長は山口組最高顧問に就任した。

ZAKZAK 2007/02/15

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_02/t2007021522.html