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2007年02月15日(木) 04時26分

仲間意識につけこむ 小林容疑者、障害者を仲介役読売新聞

 手話を使って聴覚障害者を勧誘し、出資金名目で多額の現金をだまし取ったとして、福祉関連会社の社長らが逮捕された事件。14日、詐欺容疑で警視庁と県警の合同捜査本部に逮捕された福祉関連会社「コロニーワイズ」社長小林洋子容疑者(55)は、聴覚障害者を仲介役にすることで、出資話を信じ込ませていた。一連の報道を受けても、だまされたことを認めたがらない被害者がいるといい、容疑者を支援する会も組織されていた。関係者からは、障害者同士の結束の強さにもつけ込んだ犯行に改めて非難の声が上がった。

 被害者の多くは、既に出資した聴覚障害者の友人に誘われ、老後の生活費などから資金を工面していた。逮捕容疑となった南巨摩郡の50歳代男性のケースでも、男性は親しい間柄だった聴覚障害者の夫妻に、出資話を持ちかけられた。

 聴覚障害者の生活相談を受け付ける県立聴覚障害者情報センターによると、県内の聴覚障害者のほとんどが顔見知りという。障害を抱えているため交友関係が限られる現実があり、ろう学校の同窓生や、センターに集まる仲間の結びつきは強い。

 同センターの相談員、小沢恵美さん(31)によると、一連の問題が報道されてからも、小林容疑者を信じて現金が返ってくると主張する人は多かったという。小沢さんは、小林容疑者が被害者からの信頼を得られた要因として、手話を用いた手法に加え、障害者同士の信頼の強さを挙げる。「障害者には『仲間がうそをつくとは思えない』という意識がある。その仲間が紹介した小林容疑者が悪いことをするはずがない、と思ってしまったのでは」と話す。

 被害弁護団などによると、県内被害者が県警に刑事告訴した後の昨年10月、県内の聴覚障害者16人を含む約40人でつくる「小林洋子社長を支援する会」の存在が確認されている。会員は、一口5万円を小林容疑者に出資しているという。小林容疑者側も被害者に対し、再三、「センターの言うことは信用するな」という趣旨の連絡をするなどしてきた。弁護団は「県内で判明している被害者は約30人だが、いまだに被害にあったと考えていない人は多い。逮捕を契機に全面解決に今後も協力する」としている。

 一方、東京地裁は昨年12月15日、コロニーワイズの破産開始を決定。5月末には債権者集会が予定されている。被害者が拠出した現金が全額返ってくる見通しはなくなったと見られ、弁護団は「被害者に謝罪し、少しでも多く被害弁償をするようにしてもらいたい」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamanashi/news001.htm