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2007年02月15日(木) 14時19分

2月15日付・よみうり寸評読売新聞

 〈手話〉——18世紀、世界最初のろう学校がパリに創設された。耳の不自由な人たちが使っていた身ぶり手ぶりを基礎にそこで体系的手話が創始された◆日本では、1878年、京都盲唖(もうあ)院の開設を契機に手話がつくられたのが始まりといわれる。それを使う人々の表現力を豊かにし、生活圏を広げるなど、手話が果たしてきた役割はまこと大きい◆その大切なコミュニケーションの手立てを悪用するとは、とんでもない罰当たりだ。警視庁と山梨県警の合同捜査本部が福祉関連会社「コロニーワイズ」の女性社長ら3人を詐欺容疑で逮捕した◆もっぱら聴覚障害者を相手に「銀行より高い利息を払う」などと手話で持ちかけ、出資金の名目で老後の生活資金などをだまし取っていた疑い◆18都県の270人から27億円も集め、多くは借金返済に充てたとみられる。手話のできる人には、知らず知らず心を許してしまうような聴覚障害者につけ込んだ悪質な犯行だ。そこが許せない◆先週は知的障害者、今度は聴覚障害者。弱者狙いの卑劣極まる犯罪は根絶やしにしたい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070215ig05.htm