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2007年02月14日(水) 00時00分

かっぱ橋見守る ビッグなコック朝日新聞

 食に関する道具は何でもそろう、台東区の「かっぱ橋道具街」。最も古くから営業する店舗の一つで、屋上の巨大なコック像が目印の「ニイミ洋食器店」が創業100周年を迎える。昭和の初めに中国料理人気を予想して大陸へ渡ったり、高度成長期にはお子様ランチの皿でヒットを飛ばしたり。日本の食卓の国際化、レジャー化を舞台裏から支え続けている。(長沢美津子)

 現在、店を切り盛りするのは副社長の新実孝さん(44)。25年前に登場した高さ11メートルのコック像のモデルは、祖父で2代目の故・善一さんだ。2年前に亡くなった、父で3代目の善三郎さんの発案だった。「商売を受け継いだ自分が守る番だと昨年塗り替え、生き生きした表情に戻りました。本人にひげはなかったが、表情はそっくり」と孝さんは話す。

 古道具商を営む初代を説得し、大正初期に洋食器を扱い始めた善一さんは、自転車でレストランに営業して回った創業時を、自身の「回顧録」に書き残している。善一さんが「日本は将来、かならずや中華料理が一般大衆に愛好される」と中国へ渡ったのが1930年。輸入契約を結び、国産の中華食器の開発につながった。

 孝さんの記憶にある戦後のヒット商品は、父善三郎さんの代のお子様ランチ皿だ。動物や新幹線などを題材に洗いやすいデザインを考え、全国のデパートから注文が舞い込んだ。「新幹線の進化に合わせて商品のモデルチェンジをするのですが、種類が増えすぎて」と孝さんは苦笑いする。

 かっぱ橋はバブル期はグルメブームで、その後の不況時は激安の商品で人気に。一般客が足を運ぶようになると、週末、にぎわいが増した。

 いま目に付くのが、店を開こうという外国人だ。「ほしいと言われる道具が日本で見つからないことはまずない。中国の料理人が日本製の中華鍋を愛用してくれるのがうれしくて」と孝さん。

 チャルメラ、アルミの出前箱、めんの湯を切る手持ちの網……。都内の工場が消え、名人の職人が引退して「使いやすかったのに」と客が惜しむ声も聞く。

 「インターネットの時代だからこそ、現物にふれて選べることが強みになる」と孝さん。「商品知識に磨きをかけ、プロの街としての誇りを大切にしたい」

 17日まで記念謝恩セールを実施、全品5%割引などを行う。問い合わせは同店(03・3842・0213)へ。

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000702140001