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2007年02月14日(水) 00時00分

徳島は「不法就労の温床」朝日新聞

 技能研修の受け入れ制度で入国した外国人の労働環境を改善しようと、徳島市内のホテルで13日、適正化会議が開かれた。外国人労働者の相談を受けている連合徳島の主催で、徳島労働局や県、県中小企業団体中央会など企業を指導、監督する側の担当者も出席。県内で横行する制度悪用を挙げ、同労働局が「徳島の経済は違法の上に成り立っている」と厳しく指摘する場面もあった。

 (佐々木洋輔)

 制度は「外国人研修技能実習制度」で、中国などの青壮年に対する「技能移転」という名目で90年代前半に本格導入された。外務省や法務省など5省が管轄する財団法人「国際研修協力機構」(JITCO)が窓口となり、企業は、業界でつくる事業協同組合を通し、まず研修生として受け入れる。一定水準の技能を習得した外国人は、企業と雇用契約を結び実習生として働く。期間は最長3年。実際には、「企業による安価な労働力確保だ」との指摘が当初からあった。

 この日、会合での同労働局の報告によると、05年現在、県内には5818人の外国人がいて、約3千人が研修・実習生。そのうち90%以上が中国人だという。

 同労働局は06年、研修・実習生から寄せられた訴えや各方面からの情報に基づき、計97件について立ち入り検査などを実施して調べた結果、70件で違法行為を確認したという。労働時間の超過や割増賃金の不払い、安全衛生面での違反といった、基本的な条件面での違反がほとんどだった。

 労働者本人ではなく、第三者からの情報で調べた79件だけをみても、56件で違法と判明。調査に対する違反率70・9%は、全国平均(約50%)を大きく上回っているという。

 会議に出席した同局監督課の高橋靖課長は、現状について、「昨年4月に東京から赴任して驚いた」と言い、「規模が小さい徳島県で、ここまで異常な実態があることに憤りを覚える。これほどひどいとは思わなかった」と、受け入れ企業を厳しく批判した。

 また、連合徳島は、研修・実習生から寄せられた260件を超える相談内容から、制度の問題点を、(1)来日前に多額の借金をする必要がある(2)受け入れ機関(事業協同組合)と派遣先の責任が不明確(3)外国人への偏見や差別——などと分析。途上国などへの「技能移転」という制度の趣旨の形骸(けいがい)化を指摘し、「まるで時給300円の期限付き働き手だ。研修・実習生は日本人に対し、何らかの恨みを抱いて帰国している。このままでは国際関係さえ損なう」と訴えた。

 事業協同組合の認可権を持つ県は「指導に重点的に取り組む」と発言。連絡協議会を設置し、組合と企業を指導してきた同中央会は「横の連携を深め、時宜を得た活動に取り組む」と述べた。

 この状況について、国際研修協力機構の担当者は、「機構には強制的な調査権がなく、企業に的確な指導ができていないのが現状。帳簿の閲覧など、手法を考え直して実態を把握していきたい」としている。

http://mytown.asahi.com/tokushima/news.php?k_id=37000000702140003