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2007年02月14日(水) 11時27分

住吉会VS山口組、火種は「六本木利権」 和解で沈静?朝日新聞

 指定暴力団住吉会小林会系幹部が白昼に射殺されたのに端を発した都心の連続発砲事件の背景に、東京・六本木周辺の利権を巡る小林会と指定暴力団山口組国粋会の対立の構図が色濃く浮かび上がってきた。両団体が8日に合意した和解条件にも、六本木利権に関する取り決めが盛り込まれたとされる。関係者の間では、事件を機に山口組の東京進出が進み、主要暴力団の勢力図に影響を与える可能性が指摘されており、警視庁も警戒を強めている。

東京都内における暴力団主要3団体の勢力推移

 都内有数の繁華街・六本木で飲食店からの「みかじめ料(用心棒代)」などの利権を手にしているのは小林会とされる。同庁によると、元々六本木を「縄張り」としていたのは国粋会だが、小林会が借り受けて利権を握る代わりに一定の「賃料」を国粋会側に納める慣習が続いていた。

 「国粋会が05年9月に山口組入りして以降、山口組の看板を盾に賃料の値上げや利権の返還を要求する国粋会側と小林会は水面下で争い、緊張関係が続いていた」(暴力団関係者)。「賃料は本来、利益の一定割合を毎月納めるといった取り決めだったが、最近は盆暮れにまとまった額を納める程度で、慣習があいまいになっていた」(捜査関係者)

 幹部を殺害されたことに対する小林会側からの報復とみられる連続発砲は、当初は同じ山口組内の別の組織の事務所に向けられたが、最終的には国粋会系の元事務所に向かった。両団体間にあつれきが生じていたこともあり、捜査関係者の間には、六本木利権を巡る暗闘が小林会系幹部の射殺という形で噴き出し、小林会側が報復に走ったという見方が広がっている。

 事件から和解に至る経過でも、六本木利権の行方は交渉の大きな焦点だったようだ。

 複数の関係者の話を総合すると、和解に向けた会合は、関西から上京した山口組幹部らが小林会側を訪れた7日にも持たれたが、小林会側が「六本木の縄張りは国粋会から譲り受けたものだ」などと主張したこともあり、折り合わなかったという。

 翌8日、最高幹部同士の話し合いの中、小林会側は六本木利権が国粋会側から借りたものであることを改めて認め、従来の関係を維持。一方で山口組側も、殺害事件に関して関係者の何らかの関与があったことを認めたとされる。代償に山口組側から数千万円の金が渡る約束が交わされたとの情報もある。

 「最高幹部同士の話し合いで和解した以上、発砲事件の連鎖には歯止めがかかるはずだ」と捜査関係者は期待する。

 かつて、住吉会や稲川会など関東の有力組織でつくる「関東二十日会」と山口組の間には、東京では山口組の看板は掲げないという不文律があったとされる。

 ところが、関東二十日会きっての古参組織・国粋会が05年に二十日会を突如脱退し山口組入り。この際、関東二十日会側は、山口組が国粋会の縄張りを足がかりに東京の利権に浸食するのではと懸念した。

 「今回の事件で、結果的に山口組は六本木利権にくさびを打ち込んだといえそうだ」。暴力団事情に詳しい関係者はそう語る。

http://www.asahi.com/national/update/0213/TKY200702130387.html