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2007年02月13日(火) 00時00分

NHKタワー景観破壊騒動…横浜に110m!住民「やめて」ZAKZAK

中華街と山下公園隣接の一等地

 論争の発端は、横浜市中区山下町で持ち上がった再開発計画。問題の地区は1万2100平方メートルの元県警本部跡地。本町通りに面し、中華街と山下公園に隣接する好立地で、敷地内には市指定文化財の旧露亜銀行横浜支店や県指定文化財の旧横浜居留地がある。

 2000年12月には最大1700人収容の歌舞伎専用劇場「かながわドームシアター」としてオープン。当初、坂東玉三郎氏を芸術監督に迎え話題を振りまいたが、ホールの欠陥が原因の騒音問題などで坂東氏は早々に“降板”するなど迷走を重ね、02年には閉鎖の憂き目にあった。それから長らく更地になっていた。

 再開発計画が持ち上がったのは05年9月。「(1)地域のにぎわいの創出(2)文化芸術の創造発信(3)歴史・文化の継承−を基本方針に、神奈川の顔としてふさわしい拠点づくりを目指した」と計画の骨子を語るのは、県総務部財産管理課の若林伸之課長代理(51)。

 計画は県立新ホール・NHK横浜新放送会館を中核とした大型複合商業ビルを建設するというものだが、論争を呼んだのは各施設の「高さ」だ。

  「山下町の歴史的景観を破壊しかねない」と危惧(きぐ)するのは、計画の見直しを求めて署名活動をしている市民団体「山下町本町通り地区景観と環境を守る会」の藤木まゆみ氏(48)と大塚正三氏(50)。

 真ん中に建設予定のNHK放送局のアンテナは約110メートル。横に並ぶ商業ビルは75メートルの高さになるという。

 藤木氏らは「建築物の高さについて、住民への説明はなかった」と憤るが、県は「計画の初期段階で委員会を作り、識者や住民からの意見を仰いできた。説明責任は果たしている」と反論する。

 さらに、「ここ数年でこの地区には高層マンションが乱立し、条例で31メートルの高さ制限ができたばかり。条例違反ではないか」との声に対しては、「条例は住居施設に限る。一定の条件を満たせば商業施設の高さの上限は75メートルまで建設可能だ」(県管理課)と説明するなど議論は平行線をたどった。高さの必然性には言及しなかった。

 さらに、NHKの新放送局の入居が決定した経緯も不可解だ。

 高さについてNHK横浜放送局の広報担当者は「110メートルのアンテナはこの地区の前に建つ高層ビルが電波を妨害するため」と回答。わざわざ110メートルのアンテナを建てざるをえない場所に新放送局を移転する理由については、「県からの要請があった」と答えるのみで、明確な回答は得られなかった。

 同様の景観問題を抱える京都市は31メートルに設定されていた高さ規制を景観保護の観点から、さらに厳しい20メートルに見直した。

 一方、山下町地区と同じ商業地区ながら、統一感のある景観保護のため、禁止区域内の56メートルの高さ制限の条例を設けている東京・銀座では、条例により松坂屋の190メートルの高層ビル化計画が頓挫する事態も起こっている。

 県は「横浜開港150周年の09年のオープンを目指す」としているが、「代わり映えのしない商業施設を建設しても集客が見込めるか、はなはだ疑問」といった声も聞かれる。

 開発と伝統の相克に揺れる横浜・山下町…。答えはまだ見つかりそうにない

 

ZAKZAK 2007/02/13

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_02/t2007021326.html