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2007年02月12日(月) 00時00分

立証分かりやすく/裁判員制度控え検察官朝日新聞

 裁判員制度が09年5月までにスタートするのに合わせ、市民に分かりやすい裁判の工夫に新潟地検(幕田英雄検事正)が取り組んでいる。難しい法律用語を簡単な言葉に言い換えたり、法廷にスクリーンを入れて犯行現場の様子を説明するなどが一例。「早口」「難解で何を言っているか分からない」などといったかつての検察官の法廷でのイメージを、変えることができるか——。

 スクリーンに映し出された人体図。「ここに2カ所の刺し傷があります」。男性検事がパソコンを操作しながら、殺人未遂事件の被害状況を説明していく。

 新潟地検は1月から週1回、検察官の内部勉強会をスタート。この日は、検事の1人が担当する事件を題材に、画像で犯行状況を説明したり、立証に必要な証拠の数を絞って審理を迅速化させるなどの工夫を紹介。「裁判員に図表を配布すればもっと分かりやすくなるのでは」—。ほかの検事からも新たな意見やアイデアが出された。

 裁判員裁判では、市民から選ばれた裁判員6人が検察側、弁護側双方の主張を聞いた上で、有罪か無罪かを判定し、量刑も決める。「専門家同士のやりとりとは違い、誰にも分かりやすく事件の核心を示し、しかも迅速に立証を進めていくことが求められる」と田辺哲夫次席検事。普段の法廷でも既に裁判員がいると仮定し、スクリーンを導入したり、言葉遣いをやさしくするなどの工夫が定着してきたという。

 例えば「順法精神」は「法律を守ろうとする意識」、「窃取」は「盗む」、「詐取」は「だまし取る」などと言い換える。裁判員や傍聴席にアピールするよう、「大きな声で」「反応を確かめながら」話す。

 高木明検事(46)は「いままでは裁判官が後で書類を読んでくれるという意識が強かったが、裁判員にはその場でしっかり理解してもらえるよう話さないといけない。法廷での緊張感も増している」と話す。

 従来の膨大な証拠や書類の簡素化も課題。起訴事実を争わない事件では、犯行現場までの経路の写真を大胆に省いて現場そのものの写真に絞るなど、検討材料となる書類を厳選し、迅速な裁判の進行を目指す。供述調書や実況見分調書などの作成時も「分かりやすいか」「無駄がないか」を意識するという。

http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000000702130005