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2007年02月12日(月) 00時00分

国とは 「建国記念の日」各地で集会朝日新聞

  「国を愛する心」が改正教育基本法に盛り込まれ、「美しい国づくり」を掲げる安倍晋三首相は憲法改正を目指す。建国記念の日の11日、県内各地で集会が開かれた。市民らが平和への危機感をにじませる一方で、日の丸の小旗を手に祝賀行進も繰り広げられた。

  「建国記念の日を考える集い」が周南市の徳山保健センターであり、元教師の古谷秀康さん(78)ら市民3人が戦争体験を発表した。

  古谷さんの話では、「皇紀2600年」と国中がお祭り騒ぎになった年、少年雑誌と同じ50銭の修学旅行の積み立てができない級友が何人もいた。米国との戦争に突入すると、古谷さんは工場に駆り出され、海軍の少年兵に志願した同級生は帰らなかったという。

  教育基本法は改正され、憲法の改正も現実味を帯びつつある。古谷さんは「この国の現状を見るとき、情けない思いです。孫の世代が本当に平和で、民主的な世であってほしい」と結んだ。

  山口市の県立図書館であった「思想と信教の自由を守る県民集会」には約120人が参加。島根大大学院の藤田達朗教授(憲法学)が「国は『こころ』をしばれない」と題して講演した。

  教育基本法改正や改憲論議について、「国民を道具視し、国家のために動員するよう心に踏み込んで方向づけをしている」。「憲法は国民を守るものだった。今は支配するものになるよう議論されている。嫌なものは嫌だと声を上げていこう」と訴えた。

  参加者は集会後、戦争放棄の意味を込めたほうきや「NO戦争」と書かれたプラカードを手に市中心部を練り歩いた。

  一方で、建国を祝う行事も各地で開かれた。

  下関市では、市や連合自治会などでつくる実行委員会の呼びかけで集まった約1400人が祝賀パレード。市吹奏楽団の演奏に乗って日の丸の小旗を手に歩いた。参加した主婦(62)は「最近は国旗を掲げることが少なくなったが、日の丸を使わせていただくのはありがたいこと」。

  防府市では、35団体・個人でつくる「奉祝会」の約150人が防府天満宮から日の丸の小旗を手に歩いた。同市の「天神ピア」で奉祝会があり、同会長の田中康一・防府青年会議所理事長が「武士道や思いやりの心など、失われた先人の志を引き継ぎ、自信と誇りのある国を造っていこう」と呼びかけた。

  山口市中心部でも、自治連合会や婦人会が呼びかけて約350人が行進した。市民会館で開かれた祝賀式典では、岸信夫参院議員が教育基本法改正に触れて「国を愛し、他国を尊重する心を持った子どもが育つことを祈っている」と述べた。

http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news.php?k_id=36000000702130005