記事登録
2007年02月10日(土) 17時53分

東京・成城に防犯カメラ400台 設置や管理、住民主体朝日新聞

 高級住宅地や多くの学校を抱える東京・成城。警視庁成城署の音頭で防犯カメラの設置が広がり、管内で202カ所405台に達した。侵入型の窃盗が前年比で4割減るなど、同署は犯罪抑止効果を強調する。住民側が主体的に設置・管理するのが特徴で、成城方式として全国的にも注目されている。

事業所に設置された防犯カメラ。望遠、広角の2種類で路上を撮影している

 東京23区で面積2位、人口1位の世田谷区は05年、刑法犯の認知件数が約1万5000件と1位だった。成城署が管轄する同区西部は成城や岡本など高級住宅地があり、窃盗事件も多い。00年12月末には一家4人殺人事件が起きた。住民の間には治安悪化への不安が根強くある。

 同署側が、地域の法人会や町会を通じて住民に協力を呼びかけたのは05年11月。「泥棒が一番嫌がるのは防犯カメラ。事件発生時もカメラの映像が犯人を割り出す手がかりになる」

 カメラはリースが一般的。4台に録画装置、モニターのセットで月額約1万円。建物の入り口付近に2台設置して入り口側の道路を両方から映し、建物の裏・脇に2台設置するケースが多い。映像は自動的に3〜7日間保存され、その後は上書き消去されていく。その家や周辺で事件が発生すれば、警察は映像の任意提出を受け、捜査の手がかりにする。

 カメラに犯人や車両などが映っていたことで、ひったくり(06年8月、被害総額約63万円)や、重傷ひき逃げ(06年11月発生)などの事件計8件を解決したと同署はいう。

 同署は10日午前、防犯カメラが400台を突破したのを受けて集会を開いた。カメラの映像から犯人が逮捕されたひったくり事件の女性被害者が「人通りの多い通りだったのにその日はとても暑く、歩行者がいなかった。カメラを設置してくださった方に感謝の気持ちでいっぱいです」とあいさつした。

 管内の06年の犯罪認知件数は刑法犯全体で3923件(前年比11%減)、車上狙いが88件(同66%減)、侵入型の窃盗が266件(同45%減)と、それぞれ減っている。同署には「成城モデル」として全国の自治体などから問い合わせが来ているという。

 世田谷区岡本1丁目に住む無職女性(62)は今年1月に4台設置した。共働きの娘夫婦と孫との4人暮らしで、孫と2人だけで過ごす時間も長いという。「不審な人を近くで見かけて怖い思いをした。今はカメラに守られているようで心強い」と話す。カメラには近所の住民も映るが、設置時に説明し、理解してもらったという。

 同区粕谷2丁目の一戸建てに住む会社役員の女性(66)は近所に小・中学校があり、「子どもを犯罪から守りたい」とカメラを設置した。「皆で見回りするのは難しいからカメラに頼るしかない」

 防犯カメラの過剰な設置は「プライバシーの侵害」や「監視社会化」の恐れが専門家から指摘されている。が、住民側には「安全に代えられるものはない」という思いがある。同区南烏山6丁目で自ら経営する会社の事務所に防犯カメラを設置した鈴木久元さん(68)は「確かに機械に監視されることは冷たくさみしい。でも、犯罪抑止が最優先」と言った。

http://www.asahi.com/national/update/0210/TKY200702100250.html