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2007年02月10日(土) 00時00分

あるある 捏造の背景  東京新聞

 捏造(ねつぞう)が発覚した情報番組「発掘!あるある大事典2」はテレビ業界で、「出演者の配置からデータの示し方まで制作のノウハウが確立された、お手本のような番組」(在京キー局関係者)などと評価されていた。ただ、そのようにパターン化した制作システムの中で、初歩的な確認作業を怠ったり、予定を変更しにくかったりしたことが、捏造を許した背景にありそうだ。 (放送芸能部・小田克也)

 一月七日放送分で行われた捏造の一つが、取材対象者の発言の差し替えだ。

 「納豆ダイエット」を取り上げた同日の放送では米国のアーサー・ショーツ教授へのインタビュー部分で、「(ダイエット効果のある)DHEAを増やすことが可能」との字幕が流れたが、ショーツ教授はそんな発言はしなかった。元番組スタッフの証言によると、VTR作成を請け負った制作会社「アジト」ディレクターの指示で「うその字幕」が打ち込まれたという。

 関西テレビによると、同日放送分は昨年十二月三十日に完成し、放送前の一月四日と五日に最終チェックが行われた。関テレ、番組制作を請け負った「日本テレワーク」のプロデューサー計六人が立ち会った。

 この段階のVTRには、ショーツ教授の発言に「うその字幕」が入っていた。しかし音声と字幕との整合性や、発言内容の確認を求める声は、上がらなかった。

 「立ち会った者にとっては、発言の中身など、どうでもよかったのではないか。字幕もしくは日本語の吹き替えが視聴者の興味を引くか。それしか関心がなかったということだろう」

 ある制作会社のベテランプロデューサーはこう語る。翻訳がきちんと行われているか、といった初歩的な確認作業を怠っていた−との指摘だ。

 別の制作会社のプロデューサーも、「総合演出ディレクターが基本的な作業をおろそかにし、それが常態化していたのでは」とみている。

 一月七日放送分は、昨年八月十一日、まずテーマを「短期ダイエット」に決定。九月末ごろ、やせる効果のある食材探しを始めている。

 この点についても、ある放送業界関係者は「最初からテーマを決め、それに合う食材を探したり取材対象を見つけたりするのは無理がある」と首をかしげる。

 実際、十一月に入って大豆タンパクの主成分である「β(ベータ)コングリシニン」に関する取材対象者との交渉が難航し、別の取材対象に変更していた。

 「とにかくテーマを設定し、後は『何が何でも探し出せ』ということだろう。スタッフは番組の素材が集まらなくても『テーマを変えましょう』と上司に進言できなかったのではないか」と、番組づくりが「硬直化」していたとみる。

 関テレが総務省に提出した捏造問題の調査報告書も、「『信頼関係』のもと体制が硬直化し、過信および甘えが生じ、リスクの発見を怠ったことは否定できない」と断じている。

 菅義偉総務相は九日の会見で、調査報告書について、「孫請け会社がすべてやったことになっていた」と批判した。

 関テレは孫請けのディレクターが単独で捏造を行ったとして責任回避を図っているが、番組の制作現場は初歩的な確認作業や、内容の変更を認める柔軟性を欠いていた可能性が高く、発注元としての責任を問われるのは不可避といえそうだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20070210/mng_____kakushin000.shtml