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2007年02月09日(金) 00時00分

市民団体は強く反発 横須賀朝日新聞

  米海軍横須賀基地への原子力空母配備の是非を問う住民投票の条例案が8日、横須賀市議会で反対多数で否決された。「地方自治体に決定権限のない空母問題は住民投票になじまない」という蒲谷亮一市長の見解を受け入れた形だ。一方、「軍都」の有権者の1割強が基地問題で自らの意思表明を望んだことは、新たな市民意識の芽生えという見方もある。

(其山史晃)

  採決前、条例案に反対の立場の3人が意見を述べた。このうち松井哲三議員(自民)と嶋田晃議員(公明)はそれぞれ、外交・防衛問題は国の専管事項であることや、日米安保の重要性の観点から「住民投票はなじまない」と主張した。

  また、佐久間則夫議員(ニューウィング横須賀)は、原子力空母配備を問うことは日米安保条約上の米軍基地の存在の是非という問題につながると指摘したうえで、「配備の諾否だけを問う住民投票が、江戸末期から海軍との共存を事実上の歴史資産とする市にとってふさわしいのか」と疑問を投げかけた。

  これに対し、賛成意見を述べた議員は8人。藤野英明議員(無所属)は「条例制定の直接請求をされたのは、原子力空母問題で、市長と市議会の考え方が市民の思いと離れていたからだ。有権者の9人中1人から要請された住民投票は実施されるべきだ」と主張した。

  また、原田章弘議員(研政21)は「配備は市の将来のありようにかかわり、住民の生活や居住環境に重大な影響を及ぼす問題。市民が自ら決定する住民投票になじむテーマだ」と訴えた。

  採決の結果は、条例案への賛成が10人、反対が31人だった。

  蒲谷市長は「私と同じ理解を議会にいただいてよかった。空母の種類や空母がいるのかいらないのかは、市長に決める権限はない。市民が決める権限もない」とした。

  一方、本会議後、記者会見に臨んだ内藤治明議長は「市民の声を無視したわけではない。この問題では、住民投票の意思によって政府にあたることはないと大多数の議員が認めた」と語った。

  条例制定を求めて署名収集活動にあたった「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」は、「なぜ市民の声を聞く手続きをとろうとしないのか。この素朴な問いかけに市長も市議会も答えておらず、多くの市民は到底納得できない」というコメントを出した。

  しかし、同会の呉東正彦弁護士は「今回の住民投票運動を通じて、基地のことを議論するのがタブーではなく、受け身でやっていることがおかしいと思う人が増えている」と感想を述べた。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000702090003