中国から県立大(山口市)に留学中の郭伝☆(ゴウチュワンハオ)さん(27)が、日本一周自転車の旅を計画している。今年は日中国交正常化35周年。依然として日中間に横たわる、互いの無理解の壁に風穴を開けたいと願う。
11日に鹿児島市を出発し、宮崎県を縦断、大分県佐伯市から四国へ向かう。徳島県から本州に渡り、太平洋側を北上して4月2日に札幌市に着く予定だ。夏休みには北海道稚内市から日本海側を南下し、沖縄県の波照間島を目指す。
郭さんは北京出身。02年に来日し、04年4月に県立大に入学した。四つのアルバイトを掛け持ちして購入した愛車で毎日通学する。
戦後60年の一昨年、帰省すると反日ブームが盛り上がりを見せていた。「60年たっても何で仲良くなれないのか」。涙が出てきた。
自分自身、日本語を勉強する前は「日本」と聞くと、軍人が頭に浮かんだ。日本人男性を見ると蔑称(べっしょう)の「日本鬼子」を思い出した。しかし、これまで出会った日本人は圧倒的に温かかった。
昨年夏に四国を自転車で走った時は「何かあったら電話しろよ」と電話番号を書いた紙を渡してくれた人がいた。瀬戸大橋の近くではホームレスの男性が一晩中相手をしてくれた。「こういう日本を中国人はほとんど知らないし、知ろうともしない。日本もまた、中国を知ろうとしていない」
小学生の時から長距離走に親しみ、大学1年の時に日本全国徒歩横断を目標に掲げた。しかしトレーニングのしすぎでひざの骨を悪くした。1度は断念したがあきらめきれず、自転車で2回に分けて一周することに決めた。決心を忘れまいと愛車にくくりつけた袋に「夢」と大きく書いた。
荷物には、中国の絵はがきをしのばせている。「自分と会った人が少しでも中国に親しみを感じ、興味を持ってくれたら」。そう思ってペダルをこぐつもりだ。
(山下知子)
(☆の所は“シ”の右に“顥”という字です。
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