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2007年02月09日(金) 00時00分

花束や千羽鶴、交番に次々 東武東上線事故 宮本邦彦巡査部長の回復を祈り、交番に寄せられた花束や千羽鶴=8日、東京都板橋区で 中日新聞

 東京都板橋区で6日夜、東武東上線の電車にはねられ、8日も意識不明の重体が続く警視庁板橋署常盤台交番の宮本邦彦巡査部長(53)は、「死にたい」と叫ぶ女性を救おうと事故に巻き込まれた。「女性を置いて逃げるわけにはいかなかったのだろう」と警視庁幹部。地域の住民にも慕われた宮本巡査部長が勤務する交番には、お見舞いの花束が届けられるなど、回復を祈る声が広がった。

 交番には事故翌日の7日から、住民から見舞いの千羽鶴や果物が届いている。千羽鶴の一つは、日常生活でときわ台駅を使い、社会科見学で交番を訪れることもある板橋区立富士見台小の5年生の児童らが作った。事故の翌朝に事故のことを知り、「お巡りさんに手紙を書こう」「千羽鶴を贈ろう」という雰囲気になったという。

 背は高くないが、がっしりした体格の宮本巡査部長は、交番でもベテラン格。近くの商店街の商店主らからは、親しみを込めて「主任」と呼ばれていた。

 「雨が降っても風が強くても、踏切近くの横断歩道で立ち番していた姿が目に浮かぶ」と事故現場近くで総菜店を営む河原弘さん(51)。「今どき珍しい、古き良き時代のお巡りさんだよ」

 同じ駅ロータリーの和菓子店経営国分政明さん(74)は、ミニバイクで踏切を渡って配達に行く度にあいさつを交わした。「今月2日、町内会の役員らで行ったパトロールに同行してもらったばかり。私たち地域住民にとって大事な人なんだ」と容体の好転を願った。

 ある警視庁幹部は「死のうとした女性が助かり、助けようとした警察官が生死の境にいる。警察官という仕事の宿命を感じてしまう」と険しい表情のまま話した。

 警察庁でも宮本巡査部長が女性救出をあきらめなかったことに「警察官として立派な行為だ。なんとか持ち直してほしい」との声が漏れている。


http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20070209/mng_____sya_____004.shtml