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2007年02月08日(木) 13時44分

2月8日付・よみうり寸評読売新聞

 〈現代でいちばん地を払ったのは、人間の気品である。品のあるヒト、というのを見ないこと、久しい〉——田辺聖子さんの言葉(楽老抄 ゆめのしずく)◆〈そんなことしたらお天道サンにすまぬとか、お天道サンのバチ当たるとか、社会・個人を律する無形の道徳観や美意識があり、民衆はそれに照らし合わせ、納得していた〉——これも同じ出典◆さて、地を払った〈気品〉までは求めないとしても、せめてお天道サンのバチくらいは恐れてほしい。障害者になりすまし、その住民票を勝手に取得してどうする◆さらに、これを使って運転免許証を不正に取得、銀行口座を開設し消費者金融から借り入れたり、携帯電話の契約を結んだりの勝手放題とは何事か。神奈川県警が犯行グループのうち2人を逮捕した◆障害者を狙い天を恐れぬ犯行は最低。いずれはお天道サンのバチが厳しく下されると知るべし。気品などとはまるで無縁の連中だろう。東京・板橋の東武東上線の踏切で自殺志願の女性を助けようと身を挺(てい)した警察官に倣え◆久々に感じた気品ある行為だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070208ig05.htm