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2007年02月07日(水) 01時29分

2月7日付・読売社説(1)読売新聞

 [日興不正会計]「体質改善への行動が問われる」

 経営幹部から担当社員まで、不正に対する感度がマヒしていたとしか思えない。

 市場の担い手としての信頼回復には、膿(うみ)を出し切って体質を改善する強い決意が必要だ。

 日興コーディアルグループの不正会計処理問題で、外部の専門家からなる特別調査委員会が報告書をまとめた。

 日興は、投資業務を手がける子会社の100%子会社である特定目的会社(SPC)を連結決算に含めなかった。さらに、子会社とSPCとの間の債券発行の日付を偽装して、2005年3月期の利益を過大に計上していた。

 管理責任をとって金子昌資前会長、有村純一前社長が昨年末に辞任したが、「会社として利益を水増しする意図はなかった」としていた。

 しかし、調査委は、会計処理は「利益操作の意図を共有する関係者によって、組織的に進められた」と断定した。グループの最高財務責任者や子会社のトップが、深く関与していたことも示した。

 子会社の社員らの間で交わされていたメールが、動かぬ証拠となった。メールでは、債券発行の日付を遡(さかのぼ)らせ、「すさまじい連結利益を計上」する提案などがやりとりされていた。

 一方で、有村前社長は、監査委員らが処理に疑義を呈しても、積極的な対応を取らなかった。不正を許す土壌が、上下を問わずグループ全体に広がっていたと見られても仕方がない。

 さらに問題なのは、以前からSPCを使って会計が操作されていた可能性がある点だ。報告書が指摘している。

 日興は、報告書を受けて企業買収・投資のための全SPCを連結対象に含め、05年3月期、06年3月期の決算を再訂正した。「旧経営陣の判断が適正でなかった」ので透明性を高めるためという。

 それならば、訂正で減額された利益の中に、不正な処理による水増しが他にもなかったか、厳しくチェックして結果を明らかにする必要があろう。

 もし新たな不正が見つかれば、顧客の一段の日興離れが進む。日興株の上場廃止の可否を検討する東証の判断にも、影響が及ぶ可能性がある。だが、それを恐れていては過去との決別はできない。

 再発防止には、不正がなぜ起き、なぜ防げなかったのかの検証が必要だ。日興には、他の大手証券に業績面で水を開けられまいとの焦りがあったとも指摘される。動機の究明も新経営陣の課題だ。

 会計処理を認めた旧中央青山監査法人の監査に問題はなかったか。日本公認会計士協会が調査を始めた。なれ合いや手抜きの有無を、明確にするべきだ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070206ig90.htm