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2007年02月07日(水) 17時38分

県土木建築部 天下り常態化朝日新聞

 01〜05年度に退職した県土木建築部の課長級以上の職員のうち、少なくとも11人が県の外郭団体や建設関連企業に再就職していたことが、朝日新聞の情報公開請求で分かった。この間、少なくとも90人が再就職したが、うち公開されたわずか15人の中で、7人が県発注工事の入札参加資格を持つ建設関連企業の役員に天下りしていた。7人はいずれも元土木建築部幹部で、2人は同部トップの部長経験者だった。県幹部らの建設業界への天下りが常態化しているとみられるが、県は「退職後については、それぞれの良心に任せるしかない」などと話している。(山本亮介)

 朝日新聞の情報公開請求に基づいて、県が公開した01〜05年度の土木建築部職員(土木事務所を含む)の再就職状況に関する文書によれば、5年間で退職した職員計118人中、再就職したのは少なくとも90人。そのうち、再就職先が公表されたのは民間企業の役員か、外郭団体に再就職した15人だけで、それ以外の75人は非公開だった。

 土木、建設関連企業の役員に天下りしたのは、01〜04各年度に1人ずつと、05年度に3人の計7人。県が出資する外郭団体や公益法人には、02、04両年度に1人ずつと03年度に2人。消費生活センター(当時)など、県に再任用された職員も2人いた。

 7人の再就職先の企業は、売上高が県内2位の土木・建築会社など大半が県内大手の土木、建設関連の企業などで、いずれも県発注の道路工事などを受注している。また、受注実績のうち、県発注工事の受注が占める割合が高い企業も目立つ。

 県は定年より1年早く退職する部次長級の職員については、県の外郭団体への再就職をあっせんしている。外郭団体に数年在籍した後、民間企業などへ再々就職しているOBもいるとみられるが、実態は不明だ。

 民間企業への再就職については、国の場合、国家公務員法などの規定で、退職後2年間は原則として退職前5年間に在籍した部署と密接な関係がある企業には再就職できない。違反すると、1年以下の懲役か3万円以下の罰金が科される。

 一方、自治体でも、宮城県では03年10月から、国と同様、退職前の職務と関連する企業には退職後2年間、再就職を禁じている。長野県でも02年4月から、県OBの現職職員への情報収集や入札参加などの営業目的の働きかけを3年間、自粛するよう求め、誓約書を提出させている。

 しかし、県には同様の規定はいっさいなく、OBに営業活動の自粛を求めることもしていないという。県人事課は「民間への再就職については、現状では法的な制限がないため、県側が自主的に規制するのは困難」としている。

 今後は、天下りやOBの働きかけを規制するため、国に対して地方公務員法の改正を要請した全国知事会の動向を見極めながら、対応を検討していくという。

◇入札での指名…OB在籍でおおきな違い
 「県OBの口利きで仕事がとれる時代ではない」。県職員の再就職先として公表された建設関連企業の多くはそう話した。だが、その一方で、「入札での指名などでの影響力は昔も今も変わらない」「官と民の関係はどこも同じ」などと県OBの天下りを受け入れる「効用」を明かす業者も少なくない。

 01年度に退職した県土木建築部の元次長を、副社長として受け入れた大分市内の建設会社は「総務部門で社内規則の見直しなどを徹底してやってもらった。県への営業活動は一切してもらっていないし、仕事が余計にとれるということはない」。県OBを社長に迎えた別の業者は「県への働きかけを期待したのではなく、あくまでも発注者側の考え方を吸収し、仕事に生かすためで、社内も活性化した」と説明した。

 しかし、県OBを受け入れたことがある別の業者は「入札への指名などで、OBが在籍しているか否かは大きく違う」と明かした。「入札によっては、あの人の顔でとった仕事だな、とピンと来る業者も多いはずだ」と言う。

 前知事を含む県幹部らが逮捕された宮崎県の官製談合事件では、談合の疑いが持たれている入札の指名業者5社のうち、4社に同県OBが在籍していたことが分かっている。うち1社の幹部は「OBを雇わないと、指名に入れない」と断言した。

 大分市内の別の建設会社は「国の事業を見たって、発注者側とゼネコンなどとの関係は明らか。規模が小さくなるだけで、構図はどの県でも同じ」と話した。

◇増島俊之・聖学院大学大学院教授(行政学)の話
 天下りの問題点は、役所が再就職をあっせんすることに尽きる。民間企業への再就職についても、関連業界への場合は、県側がいくら癒着を否定しても県民の疑惑を払拭(ふっ・しょく)するのは不可能だろう。不正はないと言い切れるだけの根拠を示す必要があるし、透明性を担保する仕組み作りに、早急に取りかかるべきだ。退職予定者の人材バンクを県庁から切り離し、第三者機関として設置するのも一つの案だろう。

http://mytown.asahi.com/oita/news.php?k_id=45000000702070005