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2007年02月07日(水) 00時00分

ニチロ冷凍食品「ブルーベリー」から散弾…公表せずZAKZAK

 散弾を見つけたのは、東京都内の40代の教員女性。女性によると、日ごろからニチロの「ブルーベリー」を食べていたが、12月中旬に食べた商品には口の中で異物感があり、取り出すと果実の中に金属片があった。女性は「端がギザギザで、工業製品ではないと思った」と話す。ニチロ側に電話したが夜遅かったため、つながらなかった。

 週明け19日にニチロお客様相談室に電話すると、現物を送るように指示があり、女性は「何の金属なのか調べてほしい」と依頼した。

 数日後、相談室からお詫び状と図書カード500円分2枚が送られてきたが、女性は「おかしい。代金を返すべき」と電話。さらに「食べて平気なものだったのか」と不安を訴えたが、相談室側は何ら診察先を勧めることはなかったという。

 25日、自宅に電話してきた相談室長は女性が不在と知り、母親に対して「金属は散弾だった」と調査結果のみを伝えた。翌26日、女性が電話すると、相談室長は「WHO(世界保健機関)が定める、人体に有害な1日摂取量を超えないから大丈夫」と説明したという。

 ニチロ側が大手金属メーカーに依頼した調査結果報告書には、「2.5ミリの鉛アンチモン合金。狩猟用よりも、スポーツのクレー射撃用散弾銃の散弾の可能性が高い」とあった。鉛は蓄積性で、中毒になると疲労や頭痛、食欲不振、睡眠障害、抑鬱(よくうつ)状態、貧血などの症状が現れる。

 日本中毒情報センター(茨城県つくば市)は「調査結果だけでは摂取した量も、胃で溶けた量も、鉛がどこに留まっているかも分からない状況。すぐに病院に行くべき」と指摘する。

 女性が同27日に保健所に相談したところ、「2.5ミリだけなら恐らく問題ないが、日ごろから食べているなら検査したほうがよい」との指示を受けた。ニチロ側も保健所から問い合わせを受け、この段階でようやく相談室長が「すぐにお宅にお詫びに上がりたい」と電話をしてきたという。

 さらに、「会社が提携している診療所にお供しますので、ぜひ一緒に行っていただきたい」と検査を勧められたが、これまでの対応に不信感を抱く女性は、ニチロと無関係の病院での検査を希望。かかりつけの病院は設備が不十分だったため、大学病院で採血やレントゲン検査を行った結果、現時点では健康被害がないことが分かった。

 女性は「ここまでしっかり調べないと分からないのに、なぜ相談室は簡単に一般論で『大丈夫』と言えたのか。私はずっと不安な時間を過ごしたのに」と疑問を抱く。

 ニチロ広報室によると、同商品は2003年から累計1280万パックを出荷。同社は現時点で女性に対して散弾が混入した経緯を説明していないが、広報室の見解は以下の通りだ。

 「(ブルーベリー収穫地の)カナダでは害鳥駆除のため散弾銃を使用することがある。弊社原料を収穫している農場では使用していないが、その近隣の農場でこれが使用された可能性があり、きわめてまれなことだが、おそらくその流れ弾がブルーベリーに混入したものと推測しております」

 社団法人猟用資材工業会によると、「散弾銃での駆除は、日本では聞いたことがない」。ムクドリ駆除に使うとみられる散弾は、直径2−2.5ミリ。1回の発射で数百片に飛散し、範囲は最大半径1メートルに達する。同会は「鉛が体内に入ると胃で溶け、人体への影響は避けられない」と話す。

 ニチロ広報室は同様の問い合わせが一切ないとしたうえ、「他の商品への散弾混入の可能性、予想される健康被害の有無等を検討させていただいた結果、公表・回収の必要はないと判断した」としている。

ZAKZAK 2007/02/07

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_02/t2007020720.html