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2007年02月06日(火) 00時00分

DNA運動じわり波及朝日新聞

 縦割りや前例踏襲など、批判されがちな「お役所仕事」を変えようと、福岡市が「DNA運動」(D=できない理由を探さない、N=納得できる仕事を、A=遊び心を忘れずに)に取り組んでから7年目。各部署の改革実例を発表する場を設ける方式が注目を集め、同様の試みが各地に広がりつつある。7日には山形市で、改革事例を発表する全国大会が開かれる。

 DNA運動は、山崎広太郎・前福岡市長が掲げた「新たな自治体経営の検討」という公約実現に向けて00年8月に始まった。市民へのサービス精神と自治体運営に民間的な経営感覚の導入を求めた。

 当時、地方自治は「変革期」を迎えていた。改革派と呼ばれた増田寛也・岩手県知事や北川正恭・前三重県知事が「分権時代」の幕を開け、石原慎太郎氏が都知事に就任。ディーゼル車規制や銀行への外形標準課税の導入など、先駆的な施策を展開していった。

 「公務員も変わらないといけない。少子高齢化や財政難など多くの課題を抱え、役所にも改善が求められているという思いは強かった」と、萩尾雅典・福岡市DNA課長は振り返る。

 DNA運動は、部署ごとに独自の改善内容を練り、実践する。身内の自助努力で終わらせず、毎年1回、「外の目」にさらされる発表の場を設けることで、日々の取り組みに緊張感を持たせた。

 札幌市の担当者は「縦割り意識の強い役所にとって、お互いを参考にするのは画期的な試み」と驚く。同市を始め、DNA運動の理念は徐々に広がり、現在は9自治体が実践している。なかには「行政は閉鎖的」との批判を消そうと、住民公開の場で披露する自治体もある。

 成果の一つが、全国の自動販売機で見かけるようになった住所表示のステッカー。硬貨投入口の近くに「ここの住所は……」と書かれるようになったのは、福岡市災害救急指令センター職員の思いつきが原点だった。

 「携帯電話が普及し、救急通報をした人が現場の住所を知らないことが増えた」。現場が分からず、到着時間が長くなることを心配した職員が、街中にあふれる自動販売機に目を付けた。

 飲料メーカーを独自に口説き、職員自らステッカーを付けた。業界団体にも賛意が広がり、今は各地でステッカーがお目見えしつつある。小川武志・同センター長は「職員の小さな思いつきでも、市民生活に役立つことは多い」と話す。

 全国大会では、9自治体が、成果の上がった実践例を発表する。主催の山形市行政評価係の大泉信一氏は「全国の公務員に、意識改革のための情報発信をし、一つでも多くの自治体に参考としてもらいたい」と話している。

 ■福岡市以外の全国大会に参加する自治体の改善発表会■

札幌市 市を元気にしようとの思いから「元気の種コレクション」と命名。「他部局の発表を見ることで、職員がお互い感化される」と担当者。

岩手県北上市 06年度から「きたかみPing!Pong!Pang!」と題して開始。「楽しみながら改革を実践できた」と担当者。

山形市 「はながさ☆ぐらんぷり」を05年度から開催。寸劇やショートコント方式での発表などの試みも。

横浜市 「役人の底力」をテーマに、04年度から「ハマリバ収穫祭」を実施している。

静岡県富士市 チャンス、チャレンジ、チェンジの頭文字から「ChaChaChaグランプリ」と命名。04年度から始め、「役所の努力が市民に浸透してきた」と担当者。

名古屋市 市民にも公開する「なごやカップ」を03年度から実施。県内に本社を構えるトヨタ自動車の社員などが改善度合いを採点。

大阪市 ひたむきに改善に取り組む姿を、市民には高校球児と重ね合わせて欲しいとの願いを込めて事業名を「カイゼン甲子園」と命名。05年度から実施。

兵庫県尼崎市 「役所が持つ守りの風土を変えたい」と03年度から「YAAるぞカップ」を開始。ゴミの分別意識を子供に植え付けようと、保育士が着ぐるみの「ゴミワケルンジャー」に変身するなどユニークな試みも。

http://mytown.asahi.com/fukuoka/news.php?k_id=41000000702060002