千葉県柏市の食肉卸大手「ナリタフーズ」が国産豚肉保護を目的とした「差額関税制度」を悪用し、デンマーク産豚肉の輸入にかかる関税を脱税したとされる事件で、千葉地検特別刑事部は6日、同社社長の田辺正明容疑者(60)(同県我孫子市緑)と香港の食肉商社「クレバーアジアインターナショナル」代表及川三枝子容疑者(51)(同市我孫子)を関税法違反の疑いで逮捕した。
調べによると、田辺容疑者らは2004年1月〜05年2月、計823回にわたりデンマーク産豚肉を輸入。この際、輸入価格が基準価格を下回った場合にかかる差額関税を免れるため、税関に輸入価格を同制度の基準価格近くまで水増し申告し、計約59億6000万円を脱税した疑い。
デンマーク産豚肉は、クレ社がデンマークの輸出会社から1キロ当たり460円前後で購入。これを食肉輸入会社「オーエムトレーディング」が制度基準価格の524円に近い価格で輸入し、ナリタフーズに卸す形になっていた。
しかし、クレ社とオー社はともに田辺容疑者が事実上の経営者で、実質的にナリタフーズと一体とみられている。このため、特別刑事部は、クレ社とオー社間に取引実態はなく、差額関税を免れるために伝票上の価格を操作して税関に申告していた疑いが強いとみている。
田辺社長は逮捕前、取材に対し、「(ナリタフーズは)オー社が輸入した豚肉を買い付けているのであり、脱税で利益を得たことはない」と説明していた。
特別刑事部は6日、ナリタフーズ本社や田辺、及川両容疑者宅など数か所を同容疑で一斉に捜索、関係資料を押収した。