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2007年02月05日(月) 00時00分

『あるある』捏造 批判本著者が語る問題点 目立つご都合主義 東京新聞

 関西テレビ制作の「発掘!あるある大事典2」で発覚した捏造(ねつぞう)問題は前身の「発掘!あるある大事典」にも広がり、底なしの様相を呈しているが、今日の事態を予測していたかのように、早くから番組の危うさに警鐘を鳴らしていた人物がいる。関西在住の化学メーカー研究員・鷺一雄さん。毎週欠かさず内容をチェックし、疑問点をホームページで公開。昨年五月には著書「また『あるある』にダマされた。」も出版していた。筋金入りのウオッチャーが語る「あるある」への思いとは−。

  (鈴木泰彦)

 鷺さんは大学で有機化学を専攻した、一九六五年生まれの自称「教養番組評論家」。長年、テレビ各局のドキュメント系番組を視聴し続け、感想を「教養ドキュメントファンクラブ」と題したホームページで公開している。

 「あるある」については、以前から番組中の「実験」の信ぴょう性や宣伝色の強さに疑問を投げかけていたが、決定的な不信感を抱いたのは「にがり」でダイエットできるとうたった回(2004年5月30日放送)だった。

 「にがりに含まれる塩化マグネシウムは下剤と同じ効果がある。にがりダイエットは下剤ダイエットそのもので、栄養の吸収も阻害される。見た瞬間、危険だと感じた」

 放送後、にがりを買い求める人が増え、同年七月に独立行政法人国立健康・栄養研究所が「ダイエット効果を論証するような情報があるが根拠などはない」と注意を促すに至った。

 「後日、番組の中で何か触れるだろうと思ったが、一切無視。怒りが込み上げてきた」と、鷺さんは振り返る。

 鷺さんによると、かつての「あるある」は食材の効果と併せてエクササイズも紹介していた。それが、徐々に「これだけ食べていればやせる」と思わせる演出が目立つようになっていった。特に「ダイエット」や「健康」に関するテーマの回では、無理なこじつけや誇張が目立ったという。

 「ご都合主義で、言っていることがころころ変わるのも特徴。寒天は食物繊維が豊富で便秘解消やダイエットにいいと薦めておいて、後日、『食物繊維があるとカルシウムが吸収されにくい。カルシウム不足は肌の老化を招く』と脅す。サプリメント関連では、CoQ10(コエンザイムキューテン)が老化防止にいいとPRし、五カ月後に『CoQ10はアルファリポ酸があって初めて効果が出る』と言いだした」

 「シソ」をテーマにした回(05年5月1日)では「シソ油を二週間摂取した六人のうち、三人で肌の水分量が増えた」との実験結果を放送したが、画面に出た数値をよく見ると、残り三人は逆に水分量が減っていた。

 「専門知識がなくても、データに矛盾はないか、理にかなっているかどうか考えればだまされないはず」と指摘する。

 「映像で伝えられるテレビの内容は記憶に残りやすく、それが正しければ学習にも役立つ」と持論を展開する鷺さん。

 「地味で視聴率に結び付かなくても役に立つ番組を応援しようとホームページを開設したのに、悪質な番組について警告するうち、不本意ながら変質してしまった」と嘆息し、こう付け加える。

 「テレビに演出は付きものとはいえ『あるある』は、まさかそこまではしないだろうという一線を踏み越えた。関テレの責任は重大だ」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20070205/mng_____hog_____000.shtml