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2007年02月05日(月) 00時00分

夜の銀座手ほどき朝日新聞

 都内の夜の聖地・銀座。その歓楽街としての魅力に心酔し、「多くの人に良さを知って欲しい」と、「ガイド本」を出版した男性がいる。目黒区の経営コンサルタント・吉立(よし・たち)真大(まさ・ひろ)さん(43)。高級クラブ独特の商慣習や「銀座初心者の心得」など、通い詰めて得た経験をまとめた。銀座のママやホステスたちにも「真実を描写している」と好評だという。
(小金丸毅志)

 本のタイトルは「夜の銀座の歩き方 最強ガイド」。

 吉立さんが銀座の魅力を感じたのは、30歳の時、仕事相手の弁護士とクラブを訪れたのがきっかけだった。

 30代半ばの和服を着たホステスが相手をしてくれた。「ただニコニコして酒をつぐだけだろう」と思っていたが、客のたばこに火をつける素早さや、おしぼりを渡すタイミング、そして場を白けさせないように繰り出す話題の豊富さに驚いた。弁護士も、昼間は見せないようなくつろいだ表情を見せている。「酔客をここまで大事にしてくれるのか」

 酒を飲みたいというよりも、プロの接客術見たさで銀座に通うようになった。なじみの店が増え、週に5日通っていたこともあったという。「色気で勝負していないところが、他の繁華街と違うと思った」

 ホステスの「観察」を続けるうち、独特の商慣習に気付いた。客がその場で料金を払わず「ツケ」となった場合は、担当のホステスが回収の責任を負う。集客のノルマを達成出来ないと罰金がある。売れっ子になると他店に引き抜かれることがある——。完全実力主義の世界で、彼女たちがプロ意識を持つのは当然だと感じた。

 こうした夜の銀座の実態を「銀座学」という学問として研究し、書物に残そうと思い立った。「京都の祇園のように、日本の文化としてとらえたい」

 通い詰めた自らの体験に基づき、ホステスの日常や、裏方スタッフの仕事ぶりなどをまとめた。一方で「銀座デビュー」を果たしたい人には、「楽しい夜を過ごすには、客だからといってホステスをぞんざいに扱わないこと」と助言している。

 クラブ「セントポーリア」でホステスを取り仕切る「チーママ」を務める琴子さん(32)は「ホステスの仕事の面白さ、厳しさが、事実に基づいて描かれている」と感想を述べる。

 「この本は学術論文」と語る吉立さん。銀座に実際にある通りの名から「中央区立金春(こん・ぱる)大学教授 花椿通(とおる)」というペンネームを用いた。これからも「文化」に触れるため、銀座通いを続けるつもりだ。

 本は454ページ。2千円(税込み)。問い合わせは、リヨン社(03・3511・8855)へ。

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000702050002