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2007年02月04日(日) 01時47分

2月4日付・読売社説(2)読売新聞

 [「あるある」捏造]「関西テレビは説明責任を果たせ」

 次から次へと、新たな捏造(ねつぞう)疑惑が浮上してくる。関西テレビが制作した情報番組「発掘!あるある大事典2」だ。

 最初の「納豆ダイエット」に続いて、「レタスで快眠」「味噌(みそ)汁で減量」でも捏造が指摘された。「ワサビで若返り」や「レモンでダイエット」も怪しい。

 これでは大半が捏造と疑われても仕方ないだろう。放送は打ち切られた。

 ダイエットなどの効果を示すのに虚偽の実験データを使用していた。研究者の発言シーンに、言ってもいない内容の吹き替えをかぶせることもあった。

 実際の映像は孫請けの制作会社で作っていた。こうした捏造が、そこでは常態化していたようだ。

 なぜ、人気番組で捏造は起きたのか。関西テレビは「調査中」とするだけで、明確な説明をしていない。

 指摘されているのは、民放の番組の9割が制作会社に下請け、孫請けされて作られている、という構造的な問題だ。

 各局とも、視聴率アップとコスト削減を要請しつつ仕事を下ろす。請け負う側は、限られた時間と費用の中で、局から「面白い」「使える」と評価してもらえるVTRを作らねばならない。

 そうした焦りが、時に番組の捏造などにつながってしまうという。

 「あるある」には以前から疑問や批判の声が寄せられていた。関西テレビが、それをどう認識し、どんな対応をしていたのか。番組の制作過程と、過去の放送分をすべて徹底調査し、検証番組などで視聴者に説明する責任があろう。

 さらに、「あるある」を漫然と放映していた系列のフジテレビにも、責任論が及ぶのは避けられないのではないか。

 日本民間放送連盟の「放送基準」には、健康情報番組について「いたずらに不安・焦燥・恐怖・楽観などを与えないように注意する」との規定がある。

 科学的データに基づく正確な情報を提供し、視聴者の健康への影響にも配慮した番組を作る。公共の電波を使って事業をするテレビ局にとって、こうした基準を順守することは基本的責務だろう。

 ルール無視の「あるある」捏造は、同種の情報番組に対する視聴者の信頼を損ないかねない重大な背信行為である。

 総務省は、東京、大阪などの民放テレビ15社に対しても、番組制作の現状について事情聴取する意向だ。

 今後も捏造などの不祥事が繰り返されれば、「放送の自由」に公権力が介入する口実を与えてしまう。

 放送メディア全体が、危機感を持って対処すべき問題だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070203ig91.htm