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2007年02月03日(土) 00時00分

韓国人生存者が参加/旧長生炭鉱事故追悼式朝日新聞

  多くの朝鮮半島出身者が犠牲になった宇部市の旧長生(ちょうせい)炭鉱の水没事故からちょうど65年となる3日、市民グループ「長生炭鉱の“水非常”を歴史に刻む会」(山口武信代表)が事故現場の海を前に追悼式を開く。92年から韓国の遺族を毎年招いてきたが、今年は初めて生存者の男性2人が参加する。同会や遺族会は犠牲者の名前が刻まれた慰霊碑の建立を目指しており、一行は2日、県庁と宇部市役所を訪ねて、改めて協力を求めた。

  生存者の2人は金景鳳(キムギョンボン)さん(84)と薜道述(ソルドスル)さん(89)。韓国政府が設置した日本による強制連行の真相究明委員会の調査で、長生炭鉱事故からの生存が確認された。

  事故は1942年2月3日に起きた。海底坑道が崩れて海水が流れ込み、183人の炭鉱労働者が死亡。うち7割の130人余りが朝鮮半島出身者だった。

  金さんと薜さんはいずれも20歳前後で長生炭鉱へ連れてこられた。交代勤務で坑道から出た後に事故が発生したため、難を逃れたという。

  金さんは日本語を交えながら当時の状況を振り返り、「自由のない生活で生き地獄のようだった」と語った。薜さんは65年ぶりに現地を訪ねた感想として「一緒に働いた友だちが海底に眠っていることを思うと、いたたまれない思いで、涙が止まらなかった」と打ち明けた。

  現場近くに立つ「長生炭鉱殉難者之碑」に犠牲者の名前はなく、新たな慰霊碑建立のための用地確保の見通しも立っていない。県地域振興部の樫部裕人理事は「皆さんの意向が実現するような形で支援したい」と語り、宇部市健康福祉部の久保章部長も「出来ることは協力し、支援していきたい」と述べた。

http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news.php?k_id=36000000702030001