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2007年02月01日(木) 00時00分

借金苦の自殺 ストップ! 『必ず解決 まず相談』 東京新聞

 借金の返済に行き詰まって自殺する人をなくそうと、多重債務者を救う活動をしている市民団体が「早く相談してほしい」と、懸命に呼びかけている。自殺の防止を図る自殺対策基本法が昨年10月に施行され、12月には政府が多重債務者対策本部を設置。今後は借金苦を原因にした自殺への対策づくりに弾みがつきそうだ。 (白井康彦)

 「埼玉夜明けの会」の相談員として多重債務者からの相談に乗っている澤口宣男さんと吉田豊樹さんは一月十九日、山梨県富士河口湖町の青木ケ原樹海を約二十キロ歩き回った。「自殺の名所」として有名。二人はあちこちにバイクが乗り捨ててあったのを見て心を痛めた。「バイクで来て、樹海の中に入り込んでいき命を絶つのでしょう」

 ともにかつては多重債務者。消費者金融やサラ金への返済ができなくなって自殺しようと思い悩んだ。吉田さんはズボンのベルトで首つり自殺を図って意識が遠のいたが、ベルトがプチンと切れて未遂で終わった。

 「借金苦の自殺を何としても減らしたい」と、相談員仲間らと話し合う中で出てきたのが、樹海に「借金苦自殺防止」の看板を立てることだ。

 埼玉夜明けの会と同様の活動を行う各地の市民団体でつくる「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」(被連協)の会長が澤口さん。同月二十日午前、被連協の関係者約二十人が樹海に集まって七本の看板立て作業を行った。

 看板の文句は「借金の解決は必ず出来ます!」「私も助かりました」「まずは相談しましょう」。澤口さん、吉田さんと被連協副会長の橋詰栄恵さんの三人の名前で呼びかけ、被連協の電話番号「03・3255・2400」を載せた。看板の横には三人の体験記の冊子を数多く入れたビニール袋をつるした。

 二十日午後には静岡市で被連協傘下の市民団体「静岡ふじみの会」の設立総会が開かれた。「富士見」と「不死身」。「死なないで」の思いも込めた会名だ。被連協は福井県坂井市の海岸にある自殺の名所「東尋坊」にも同じ看板を立てたい考え。二十七日には傘下団体の「福井まんさくの会」が設立された。

 日本の年間自殺者数は警察庁統計によると、一九九八年に急増し、その年以降は三万人を超している。原因別では健康問題がずっと最多で、一万二千−一万七千人の範囲で推移している。二番目が借金苦を含む経済生活問題。九八年に急増して、〇二年以降は毎年七千人を上回る。

 政府は自殺対策基本法にもとづき、自殺を減らす政策づくりを進めている。そんな中、多重債務者の救済運動を進める市民団体や法律家団体が強調しているのが、借金苦の人に解決法や相談先を教えることの重要性だ。

 二十九日に開かれた政府の多重債務者対策本部有識者会議の初会合でも「弁護士会や司法書士会に加えて、各地の自治体も多重債務者からの相談に積極的に乗り、解決法などの住民周知に努めるべきだ」といった意見が相次いだ。多重債務問題に積極的に取り組み始めた自治体もある。

 岐阜県は二十九日、県庁内関係部署の連携を図る「岐阜県多重債務問題対策会議」を発足させた。税金や国民健康保険料などを滞納する多重債務者は多い。その督促の担当部署が把握した多重債務者も相談窓口に誘導していく考えだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20070201/ftu_____kur_____000.shtml