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2007年01月30日(火) 20時23分

中国残留孤児東京訴訟、原告側の請求を棄却 東京地裁朝日新聞

 日本に永住帰国した中国残留孤児40人が、国がすみやかな帰国措置や永住後の自立支援義務を怠ったために就労や教育で不利益を被ったとして、計13億2000万円(1人3300万円)の賠償を国に求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。加藤謙一裁判長は「早期帰国を実現する法的義務や、法的な自立支援義務を国が負うとは認められない」と原告側の請求をすべて棄却。「日本の生活習慣に慣れない孤児が一挙に大量に帰国すれば、円滑に定着することは困難」などと述べて、国の帰国支援策に問題はないとの見方を示した。

厚生労働省前で「声を聞いて」と呼びかける原告団の人たち=30日午後4時57分、東京・霞が関で

 残留孤児が全国15地裁で起こした集団訴訟の3件目の判決。先行した大阪地裁は原告敗訴、2件目の神戸地裁は国の責任を認めた。

 東京訴訟でも、孤児たちは、多くが日本語を十分に話せず、生活に窮していると訴えた。訴訟を通じ、制約の多い生活保護ではなく、新たな支援策の創設を国に求めた。

 これに対し判決は、民間人を保護しなかった日本軍の作戦行動などが孤児発生の原因になったとの認識を示しつつ、「直接的な原因はソ連軍との戦闘行為やソ連兵、現地住民による犯罪行為だった」と指摘。植民地や戦争をめぐる国の政策は高度の政治的判断に基づくとし、「政策と孤児発生との因果関係の有無に対し法的判断を加えることに疑問の念を禁じ得ない」と述べた。

 その上で、孤児たちが既に日本語を母国語にすることは困難なうえ、「戦争による損害は国民がひとしく受忍しなければならず、孤児たちを特別扱いする合理的理由は見いだしがたい」とし、国に早期帰国を実現する義務はないと判断した。

 国による永住帰国後の自立支援策について、加藤裁判長は「原告に多くの不満があることは理解できる」としながら、「人道的な見地から実行されたもので、生活保護を受けられることを考慮すると、違法または著しく不当とは言えない」と述べた。

http://www.asahi.com/national/update/0130/TKY200701300226.html