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2007年01月30日(火) 00時00分

事務所費問題 国会ゴング 東京新聞

 今国会最大の焦点である「政治とカネ」をめぐる論戦が29日、衆院本会議代表質問で火ぶたを切った。いずれも事務所費問題が指摘される民主党の小沢一郎代表、松本剛明政調会長、自民党の中川昭一政調会長がそろって質問に立った。国会は政治資金透明化を求める国民の声にどれだけ応えられたか。 (政治部・高山晶一、篠ケ瀬祐司)

 「事務所費の詳細を公表することが、最も分かりやすい解決策。そうしないとまともな論戦を始めることはできない」

 三十分余りにわたる小沢氏の質問時間で、小沢氏が最も声に力を込めたのが「政治とカネ」のくだり。議場は拍手とヤジが入り交じった。

 四年ぶりに代表質問に立った小沢氏が狙ったのは、自らの事務所費問題に区切りをつけるとともに、夏の参院選に向けて政治とカネの問題で攻勢に転じること。その切り札が、事務所費の詳細公表を提案することだった。

 小沢氏は、自らの詳細な事務所費について「いつでも公表する用意がある」と明言。民主党出身の角田義一参院副議長が、政治資金収支報告書への献金不記載疑惑で辞表を提出したことに触れ「十分説明しきれないという一点で政治責任をとられた」と指摘した上で、安倍晋三首相に対し「事実は解明されていない。任命権者として説明責任を果たしていない。できない場合は政治責任をとっていただくしかない」と切り込んだ。

 小沢氏としては、自分は説明できると誇示することで潔白を強調するとともに、事実関係の説明そっちのけで制度改正に焦点を当てようとする政府・与党側の姿勢を問題視したのだ。この戦略が、ある程度成功したのは確かだ。

 ただ小沢氏はこの日、詳細な事務所費を率先して公表まではしなかった。代表質問後の記者会見でも「(公表する)タイミングはその時の判断」などと述べただけ。これまで「不正や虚偽記載は一切ないことを、国会で明確にしたい」と強調していたことからすると、物足りなさも残った。

 一方、松本氏は自らの問題について「既に適切に処理していると説明してきた」などと述べた。

 これに対して首相の答弁は、小沢氏の提案に完全に“ゼロ回答”。佐田玄一郎前行革担当相の辞任について「国民に責任を感じている」としたものの、ほかの閣僚の事務所費問題については「適法に処理されたと報告を受けている」と述べただけで、追加の説明や任命責任への言及はせずじまいだった。

 首相が念頭に置くのは政治資金規正法改正。「自民党改革実行本部に検討を指示し、既に議論が行われている」と説明した上で「各党会派で十分議論してほしい」と訴えた。小沢氏の詳細公表という土俵には乗らず、「法改正」で乗り切ろうというわけだ。

 首相は、代表質問直前に、わざわざ自民党の中川秀直幹事長を首相官邸に呼び、同法改正検討を指示した。テレビ番組で法改正に慎重姿勢をみせていた中川氏の尻をたたくことで、意欲を印象づける狙いがうかがえる。

 事務所費をめぐり自民党内では「組織活動費」に計上すべき政治活動上の交際費も事務所費に計上しているケースがあるとも指摘される。首相は、不用意に小沢氏の提案に乗って新たな追及材料が出てくることを警戒しているようだ。ある自民党幹部は「(詳細公表は自民党も民主党も)できるわけない」と明言するが、逃げている印象は否めない。

 一方、中川昭一氏は代表質問で「政治資金の透明性の問題は全力で取り組むべき課題」と触れただけだった。

■5万円超は領収書 公明も義務付けへ

 公明党は二十九日、閣僚らが多額の事務所費を政治資金収支報告書に計上していた問題を受け、一件五万円以上の事務所費は報告書に領収書の添付を義務付けるように、政治資金規正法の改正を目指す方針を固めた。同じ方針の自民党と、近く協議に入る。

 公明党が二十九日に開いた拡大政治改革本部では「各党の内規見直しで対応するのではなく、法改正で対応すべきだ」との意見が大勢を占めた。具体的には、政治活動費と同様に、事務所費も一件五万円以上の支出に領収書の添付を義務付けることで一致した。

 本部長を務める東順治党副代表は会合後、記者団に「法改正をしないと履行義務が生じないし、国民に(透明性向上の成果が)見えない」と述べ、法改正の必要性を強調した。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20070130/mng_____kakushin000.shtml