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2007年01月30日(火) 00時00分

富士山「文化遺産」へ遠い頂き…ゴミ、開発問題ZAKZAK

静岡、山梨頑張り候補に選ばれたが…

 日本の自然遺産としては、知床、白神山地、屋久島などが選ばれているが、「日本一」と冠しているにもかかわらず、富士山は落選した。その背景について、静岡県世界遺産推進室担当者は「(1)道路整備はじめ、ゴルフ場や自衛隊施設など、周辺施設の開発が進み過ぎている(2)キリマンジャロなど、他の火山の世界遺産と比べて見劣りする」などと指摘。さらに、深刻なゴミ・屎尿(しによう)問題の指摘があった。

 以来、静岡・山梨両自治体では、「自然遺産」でなく、「文化遺産」として、「(1)古くから信仰の対象だった(2)芸術を生み出す舞台となっている(3)外国人にとっても日本を象徴する山」(同)など、富士山の普遍的な文化価値をプッシュする路線に変更し、今回、登録候補に選ばれた。

 とはいえ、今回はあくまでも「候補」の一つに決定しただけで、正式登録ではない。仮に正式登録が決まり、ユネスコに申請されたとしても、そこで世界基準の厳正な審査がある。それをクリアして認可されるために、行政と民間とのさらなる連帯が必要となると指摘するのは、世界遺産総合研究所所長の古田陽久氏だ。

 「地元住民、民間団体、行政が文化遺産にふさわしい景観にしようという意識を持ち、周辺の開発を抑え、美化活動に取り組む必要がある」

 確かに、最近は意識改革が進んでいる。環境に優しいバイオトイレが設置された上、以前と比べても、登山道のゴミは大幅に減っている。

 その一方、山麓(さんろく)の樹海への不法投棄はいまだ後を絶たないと嘆くのは、平成10年から富士山の清掃活動に従事してきたNPO法人「富士山クラブ」の川島攻事務局長。

 同団体では昨年だけでも50回以上の清掃活動を行い、自動車やタイヤ、布団にテント、家電まで計80万トンもの不法投棄のゴミを撤去してきた。「候補に挙がったのはうれしいが、われわれの目的は世界遺産に登録されることじゃない。これを機に行政も保全活動に尽力してほしい」と訴える。

 「文化遺産」に登録されるためには、中国の「泰山」が参考になりそうだ。「泰山はゴミ一つ落ちていない。数メートル感覚でゴミ箱も設置されている。環境保全の意識が非常に高いんですよ」(古田所長)。

 行政や民間の保全活動も重要だが、何より富士山を訪れる人々の意識を変えるのが、文化遺産への「近道」といえる。

ZAKZAK 2007/01/30

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_01/t2007013028.html