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2007年01月30日(火) 00時00分

現場発みやぎ/ヤミ金グループの悪質な手口朝日新聞

 多重債務者リストの存在、取り立てのためにうその火災通報、三つの会社名の使い分け——。県警生活環境課と仙台南署などは30日、東京都や埼玉県の20〜30代のヤミ金業者3人を、貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(高金利)の疑いで逮捕した。グループの逮捕者はこれで5人となった。一連の捜査から、彼らの執拗(しつ・よう)な取り立てと摘発を逃れる手口が浮かび上がってきた。(乗京真知)

 「家が燃えている!爆発している!」
 夜8時、男の慌てた119番通報に、仙台市の若林消防署に詰めていた約40人が一斉に消防車11台に乗り込み駆けつけた。だが、火災は発生していなかった。

 昨年、「若林区上飯田3丁目で火事だ」といううその通報が9件相次いだ。ベテラン消防隊員(50)は「もし本当の火災が別の場所で起こっていたら取り返しがつかない」と憤る。

 同じ頃、近くの葬儀場にも若い男から葬儀依頼の電話が入っていた。午後9時と夜も深かったが、急いで打ち合わせに向かうと、誰も亡くなってはいなかった。

 飲食店に架空の出前が入ったり、公共施設の爆破予告があったり。いずれもグループによる債務者への嫌がらせだった。

 融資を勧める際には、多重債務者の個人情報が入ったリストを使っていた。住所、氏名、年齢、連絡先のほか、職歴や年収も。「名簿屋」と呼ばれる業者から、千人あたり10万円程度で購入した。融資に応じた債務者が並ぶリストは特に高い値段がついていた。

 グループは東京都に事務所を置き、06年7月ごろ営業を始めた。「並木信用」「葵信販」「誠信用」の三つの社名を使い分け、返済が焦げ付いた頃合いを見計らっては別の社名で融資話を持ちかけた。

 勧誘の際は、「サポートセンター」と称する相談窓口を設け、「悪質な業者が横行しています。おかしいなと思ったら当社へご相談下さい」などと信用させていた。

 勧誘に使った電話はレンタル式の携帯電話。発信元の発覚を防ぐために、頻繁に取り換えていた。その数は92台にのぼった。

 稼いだ金を隠すために約10の銀行口座を使った。ただ、口座には合わせてわずか8万円ほどしか残っていなかった。06年7〜11月の約5カ月間で、全国32都道府県の約200人から合計2500万円の収益を得ていたと見られるが、その行方は分かっていない。

 県警は不法収益を暴力団などに納めていた可能性があると見て、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の適用も視野に捜査を進める。

http://mytown.asahi.com/miyagi/news.php?k_id=04000000701300007