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2007年01月30日(火) 22時25分

ネットで英会話 87歳、世界と語る朝日新聞

☆★津の元教諭・冨田さん★☆

 世界中の人と言葉を交わし、心を通わせたい——。津市の元教諭、冨田清志さん(87)は、長年募らせた思いを得意のパソコンで実現させた。英会話教室に通いながら、インターネットで音声を伝えるIP電話を使って世界中の人々と会話している。「草の根の交流が世界平和につながるはず」と信じ、仲間を募集している。(相原亮)

★IP電話通じ20カ国に仲間★
 朝、冨田さんは自宅のパソコン机に座ると、マイク付きのヘッドホンをかぶる。「Today is so warm(今日はとても暖かい)」。話しかけた相手はアメリカに住む16歳の少年だ。ゆっくり、はっきり発音する。「How to stop my forgetfulness(忘れっぽさをどう止めるか)」。会話の最後に、冨田さんは今年の目標を力強く宣言した。

 ほぼ毎朝のように冨田さんは、世界中の人との英会話を楽しんでいる。IP電話を使うことで、格安の通話料金で済む。通話相手を探すのも、インターネットのサイトだ。国籍や年齢、使用言語などを表示した一覧表から相手を選び、会話を楽しむ。

 IP電話サイトには世界中の人々が参加しており、気が合えば、その後も連絡を取り続ける。冨田さんのパソコンに登録された相手は、イギリス、フランス、ブラジル、中国、韓国……、20カ国近くに上る。

 小、中学校の教諭だった冨田さんが英会話に目覚めたのは、退職記念の欧州旅行がきっかけだった。旅行先で和英辞典を手に会話しようとしたが、満足に意思疎通ができなかった。「話したいことがあるのに。会話ができれば……」と悔やんだ。

 退職後、70歳ごろから本格的に英語を学び始めた。地元公民館の英語講座に通いながら、三重大の留学生を自宅に招いたり、町で見かけた外国人に声をかけたりした。

 05年夏、英語力を試したいと思っていたころ、インターネットで知り合った友人にIP電話を教えられた。パソコンは得意で、約15年前から独学で習得していた。さっそく専用ソフトを取り込み、使ってみた。簡単に会話ができる魅力にひかれ、「こんな便利なものを使わん手はない」と思った。

 以来、会話にのめり込んだ。時間さえあれば朝からパソコンに向かう。年齢を告げると、みんなが「Incredible!(信じられない)」と驚く。会話の内容は天気から環境問題まで、さまざまだ。会話では、いま住んでいる津市について「calm(気候が穏やかな)」などの単語を使って紹介する。

 だが、冨田さんはIP電話サイトに参加する日本人が少ないと感じている。「1対1のつながりは細いけど、束になれば太くなって相互理解は深まるはず。だから、多くの人に会話してほしい」と願っている。

 IP電話での国際会話に参加したい人は、Eメールを冨田さんのメールアドレス(tomi1919@za.ztv.ne.jp)へ。

◎IP電話 インターネットの技術を使って音声などを効率的に伝える電話サービス。従来の固定電話と違い、料金を格安に設定でき、距離による料金差はない。
 また、従来の固定電話は1本の回線で1人の相手としか話せないが、IP電話は1回線で複数の相手と同時に通話できる。

http://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000000701300008