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2007年01月29日(月) 00時00分

金正日、総理処分…「食糧問題で成果」多すぎた虚偽報告ZAKZAK

でも人材難でポストそのまま

 北朝鮮の朴奉珠(パク・ポンジュ)内閣総理(67)=首相=が食糧問題であまりにも虚偽報告が多かったことから金正日(キム・ジョンイル)総書記(64)の逆鱗(げきりん)に触れ、事実上の謹慎処分の状態にあることが25日、分かった。ただ“謹慎”といえども現在もポストに留まっているものとみられ、一部には「人材不足で後任がみつからない」(半島筋)との声も。北中枢では一体、何が起こっているのか−。

  朴首相の“謹慎”情報は先週、日本の一部メディアで報じられた。それによると、朴首相は昨年10月、石炭の輸出に「このまま続けば、わが国のエネルギー事情に重大な影響を与える。市民が暖房を使えなくなる」として禁輸を要望したという。核実験後、国防委員会が軍事力強化のためには外貨獲得が必要として輸出が再開され、朴首相は党指導部から「しばらく学習する必要がある」と“謹慎”処分を食らったというものだった。

 だが、半島筋は「朴首相は将軍さま(金総書記)から能力不足でおしかりを受けたのは事実。しかし、直接の理由は食糧問題にあるようだ」と、“謹慎”はエネルギー問題だけではなかったと語る。

 「失敗の原因は部下から虚偽報告が山のようにあったのが、金総書記にバレたから。事実上、更迭された可能性もあるが、肩書は変わっていない。要するに人材不足で、内閣はだれがやってもうまくいかないとされている」(同)

 金総書記の目をごまかそうと幹部らが成果を誇示したり、架空の成果をデッチ上げることは以前から指摘されていたが、あまりにも顕著になったため、金総書記の怒りが爆発したとみられる。

 一方で、平壌放送は22日、朴首相がオーストリア首相に祝電を送ったと報じており、政治生命を絶たれるほどではなさそうだ。

 静岡県立大国際関係学部の伊豆見元教授は北内部での内閣の位置付け権力について、“体力不足”と説明する。

 「首相は行政のトップではあるが、とりわけ経済の責任を負っている。今年の共同社説(労働新聞など年頭の社説)をみると、内閣よりも党がもっと経済改革を頑張れと言っている。経済改革で内閣に期待をかけられていたが、おそらく成果がはかばかしく思われていない。内閣に対して厳しい評価があるように感じられる」

 ただ、「内閣は執行機関で、決定機関は党になる」(伊豆見教授)といい、数多の失敗は、内閣だけの責任とはいえない。むしろ党のトップに君臨する金総書記に根源がありそうだが、当然そこはおとがめなしだ。

 「北朝鮮は“回転ドア政権”。幹部の人事は去っては現れ、更迭されては復権する」と語るのはコリア・レポート編集長の辺真一氏。「そもそも首相のポストは経済がうまくいかずに責任を取らされるパターンでコロコロ交代する。首相以外のポストもよく代わっていた。その中で朴首相は03年9月に就任しているから、在任期間は長い方。人材がいないのも1つの理由」と、朴首相が意外にも実力者だったと明かす。

 「00年から北朝鮮経済はプラス成長している。昨年は(ミサイル発射や核実験など)軍部の強硬路線が経済制裁を招き、マイナス成長になった。原因は軍部にあり、朴首相が更迭される理由にはならない。彼の序列は8位で、副首相は31位。いかに北の権力構図の中で内閣の地位が低いかがよくわかる」(辺氏)

 1人の独裁者と軍部が国政を牛耳る異様な政権構造の北。いくら内閣が構造改革をしようとも「焼け石に水」というところか。

ZAKZAK 2007/01/29

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_01/t2007012942.html