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2007年01月29日(月) 00時00分

事故は事件になった パロマ強制捜査 東京新聞

 ガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒で犠牲者が相次いだ事故で、警視庁がパロマ工業(名古屋市)と関連施設を家宅捜索した。刑事事件として実態解明を急ぎ、責任の所在を明らかにしたい。

 一連の事故の大きな要因となった安全装置の不正改造はガス器具業者らが、現場の判断で行ったケースが多いとみられている。

 経済産業省は、改造は業者が行ったとしても「安全装置の改造が容易だったのは欠陥と認められる」と、メーカーであるパロマの責任を重視している。

 これに対し、パロマは製品自体の欠陥は否定し、現場の判断ミスを強調している。

 装置の設計や製造過程に不備はなかったのか、また、同社の会長・社長ら幹部が不正改造をどの時点で知り、どのような対処を指示していたのかなど、今後の捜査で過失の有無や責任の所在など全容解明を期待したい。

 パロマはガス器具で世界的な規模を持つ会社だったにもかかわらず、同族経営という要素もあり、事故情報を有効に生かせる社内システムにはなっていなかったようだ。

 パロマは、業界に先駆けてガス器具の安全装置を開発し、製品に組み込む努力では他に引けを取らなかったかもしれない。

 しかし、発売した製品の使われ方や、時にはガス器具業者らの判断で改造されることがありうるなど、消費者レベルでの安全状態を把握する姿勢に乏しかった。

 安全という肝心なことを考えなかったのだろうか。これからの企業は消費者の安全を徹底的に守ることができなければ、存続が許されないという事実を経営者は肝に銘ずるべきだ。

 二十年以上にもわたって合計二十一人の犠牲者が出る大事件だったにもかかわらず、その間、総合的な防止策が取られなかったという点では、安全を司(つかさど)る警察・消防、監督官庁である経産省の責任も無視できない。

 パロマ製湯沸かし器の事件と同時期に表面化したシンドラー社製エレベーター事故でも行政機関同士の情報共有がうまくいっていれば、いたずらな被害者の増加を防げた可能性が大きい。

 パロマ事故の反省に立ち、「消費生活用製品安全法」が改正され、今春施行される。メーカーに事故情報報告義務と経産省による公表制度が設けられたのは一歩前進だ。

 行政には教訓を生かし、事故情報を有効にすくい上げて犠牲者の拡大を防ぐ不断の努力を求めたい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20070129/col_____sha_____002.shtml