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2007年01月28日(日) 01時44分

1月28日付・読売社説(2)読売新聞

 [航空路線廃止]「地方切り捨てと言われぬために」

 地方と地方を結ぶ航空路線が強い逆風にさらされている。

 日本航空、全日本空輸の両グループが、経営合理化の一環として、不採算の地方路線を来年度、一挙に廃止する方針を打ち出した。その中には、1社単独運航の路線も多く含まれている。

 航空業界は、燃料費の高騰などで厳しい経営を続けている。赤字路線の廃止には、やむを得ない面もある。

 だが、直行便がなくなれば、その地域の利便性は確実に低下する。地元の打撃は最小限に抑えることが必要だ。

 それだけではない。国内移動に時間がかかる地域が増えれば、国全体の効率性も落ちる。両グループには、そうした社会的責任も自覚してもらいたい。

 日航グループは、福岡〜青森、札幌〜長野県・松本など10路線、全日空グループは、大分〜那覇、神戸〜新潟など6路線の廃止を検討しているという。

 このうち日航の7路線と全日空の4路線は単独運航で、直行便が消滅する。

 国内路線は、座席利用率が60%を超えないと、採算がとれないとされる。廃止対象路線の大半は、恒常的に60%を下回っている。例外は、滑走路が短く、新型機を受け入れられない松本だけだ。

 路線の新設・廃止は、7年前の航空自由化で届け出制になった。それ以前は、旧運輸省の免許制で、東京〜福岡などのドル箱路線と抱き合わせ、無理やり持たされた地方路線もあったという。

 ピークの10年前に275を数えた国内航空路線は一時、219まで減ったが、最近は234に持ち直していた。

 今回、両グループが路線再編に踏み切った背景には、燃料高のほか航空業界の世界的な競争の激化がある。赤字が続く日航には、融資を仰ごうとしている金融界から合理化への強い圧力も働いた。不採算路線の廃止は、その象徴だ。

 さらに、2009年に予定されている東京・羽田空港の再拡張の影響もある。再拡張で羽田の発着枠は、約40%増え、航空各社は好採算の羽田発着路線を拡充できる。それを先取りする形で、機材と人員の再配置を始めているのだろう。

 しかし、利用率が50%程度ある路線まで、あっさり切り捨てるのは疑問だ。120人乗りのジェット機を80人乗りのターボ機に替えるなどして、維持することはできないか。

 例えば福岡〜青森が廃止されれば、利用者は羽田などで乗り継ぐことになる。乗り継ぎには割引制度も設けているが、割引率が低く、不十分だ。自らの都合で廃止する場合には、直行並みの料金を適用してもおかしくはない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070127ig91.htm