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2007年01月28日(日) 00時00分

製品欠陥認めず半年 パロマ強制捜査 東京新聞

 パロマ工業製のガス瞬間湯沸かし器による事故発覚から約半年。警視庁が強制捜査に踏み出したのは、同社側の事故対応に依然として不透明部分が多く、全容解明には関係書類の押収が不可欠と判断したからだ。警視庁は二十一人もの犠牲者を出したという重い事実を受け止め、同社幹部らの刑事責任追及について検討を重ねる。一方、パロマ側は経営陣の刷新で新たなスタートを切ろうとする矢先。企業のイメージダウンや社員の士気低下は避けられず、老舗企業の再建は一段と厳しくなってきた。

 パロマ工業製の湯沸かし器をめぐっては、発売当初から基板の「はんだ割れ」によって安全装置が作動し、燃焼が止まる不具合が多発。このため全国で安全装置を作動しないようにする不正改造が横行し、約二十年前からは一連の事故が発生し、捜索容疑となった二〇〇五年十一月の上嶋浩幸さん=当時(18)=の一酸化炭素(CO)中毒死も起きた。

 警視庁の任意の調べに、これまで同社は事故対応などの資料について「残っていない部分がある」などと説明。経済産業省の回収命令で製品回収に踏み切ったが、製品自体の明確な欠陥は認めていない。同社の説明だけでは、死亡事故が多発した際、組織内でどのような協議が行われたかなどは解明できない部分がある。警視庁は今後、押収資料を分析し、指揮伝達系統などの把握を急ぐ。

 ただ、事故はあくまで修理業者の不正改造が原因で発生。同社側は改造を禁じる文書を繰り返し配布した。さらに上嶋さんの事故器は約二十年前に製造、販売されており、これほど時間が経過した後に製造者側の過失責任が問われるのは異例という。こういった経緯から、今回の家宅捜索は被疑者不詳で行われた。 (社会部・鷲野史彦)

 「販売不振からようやく抜け出し、明るい兆しも見えてきたのに」−。自宅で捜査の一報を知ったパロマの幹部社員はくちびるをかんだ。

 パロマ製の瞬間湯沸かし器やガステーブルなど主力商品の売り上げは昨年七月の事故公表直後に最大50%落ち込むなど激減した。しかし、需要期を迎えた同十一月ごろになると、販売が少しずつ増えるなど持ち直す兆しも。

 パロマ工業は昨年末、創業家の小林敏宏社長(69)が退任し、後任に川瀬二郎副社長(68)の昇格を内定。経営陣の刷新を機に“負のイメージ”からの回復を図り、再建を軌道に乗せるため社内が一丸となって取り組んでいた。

 捜索を受けた二十七日は小林社長、川瀬副社長とも会見などで釈明や説明を行わなかった。パロマ側は経産省に提出した事故再発防止策の中で「透明性・公開性の高い経営体制を目指す」としたが、今回もトップ自らが公の前に姿を現すことはなく、消費者の不信感を増すことになりそうだ。

 一方、パロマに再発防止策などを提言した第三者委員会(昨年末に解散)。副委員長を務めた経営コンサルタントの柴田励司氏は「(事故が表面化した)昨年夏以降、製品回収を優先したのはいいが、ブランドを強化する手だてが何一つ講じられていない」と、再建の難しさを指摘している。  (名古屋経済部・山上隆之、丸山崇志)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20070128/mng_____kakushin000.shtml