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2007年01月28日(日) 17時22分

ダボス会議 温暖化、突然熱気 異常気象・石油に不安朝日新聞

 世界の政治、ビジネス指導者が集って28日まで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、地球温暖化問題に関心が集中している。温暖化防止の国際ルール、京都議定書から米国が離脱した01年以降、国際社会は温暖化対策の「推進派」と「消極派」に分裂。ところが、異常気象や石油依存への不安が米政府の姿勢に影響を与え、ダボスでも突然、表舞台に躍り出た形だ。

 温暖化問題をテーマにした分科会は17もあり、どれも満員。事務局によると「これまでで最も環境志向の会議」になった。開会直前、ブッシュ米大統領が一般教書演説で気候変動に立ち向かう姿勢を見せ、雰囲気がさらに盛り上がった。

 かつて温暖化防止の国際条約交渉を担当した米国の国連財団総裁、ワース氏は分科会で、米大手エネルギー企業が二酸化炭素(CO2)排出を総量規制したうえで排出枠を取引できる「キャップ・アンド・トレード」制度を支持し始めたのが「大きな変化」と語った。同制度はこれまで、「経済を失速させる」と米産業界が強く抵抗してきたものだ。

 米大手エネルギー企業デューク社のロジャース社長は「米発電業界の経営者の8割は、CO2排出が厳しい制約を受ける時代を覚悟している」と話す。議定書離脱の頃のような、温暖化自体を「科学的に不確実」とする声は聞こえない。

 ハリケーンや竜巻、干ばつ、洪水、熱波、寒波。「変化」の背景にはここ数年、異常気象による自然災害が大規模化してきた現実がある。 

 米ウッズホール研究センターのホルドレン所長は「今や気候変動ではなく、気候崩壊だ」。再保険最大手の最高経営責任者によると、「温暖化防止コストの方が被害に伴うコストよりもはるかに安い」という。

 01年の世界同時テロ以後、中東石油への依存の危うさも明らかになり、バイオ燃料や太陽光、風力発電など再生可能エネルギーの議論につながっている。原発産業が勢いづいている様子もうかがえる。CO2削減が避けられないなら、新技術や排出枠取引で利益を、という流れが米国を巻き込み始めたようだ。

 だが、「なぜこの議論が6年前のダボスでできなかったのか」という冷めた声もある。京都議定書でCO2削減義務を負う西欧諸国や日本では、議定書が完成した01年から議論がずっと続いているからだ。

 企業経営の温暖化リスクの分析や助言をする米国の非営利組織代表、ミンディー・ルバーさんは「アメリカ人が温暖化に恐れを持ったのは(ハリケーン)カトリーナなのです」と話した。

http://www.asahi.com/business/update/0128/002.html