記事登録
2007年01月28日(日) 16時51分

「過去問」、17国公私大が相互利用 08年度入試から朝日新聞

 岐阜大を中心とする17の国公私立大学が、入試で過去に出題した問題を互いに利用できるようにするネットワークをつくり、全国の大学に参加を呼びかけている。各大学の「過去問」を共有財産と位置づけ、相互利用を可能にすることで、入試問題作成に要する時間や労力を節約しようという狙いだ。17大学は08年度入試からの導入を予定しているが、「難問奇問が減り、良問が増える」と評価する意見がある一方で、「受験生が過去問あさりに熱中するようになる」と懸念する声もある。

 過去問利用のネットワークづくりは、05年11月に開かれた国立大学協会総会で、岐阜大の黒木登志夫学長が非公式に趣旨を説明。賛同したお茶の水女子大、名古屋市立大、順天堂大などが昨年5月、「入試過去問題活用宣言」に合意した。

 運用は、参加大学間での過去問相互利用は08年度入試からとする▽そのまま使用することも一部改変して使用することも可能▽受験生に対し、過去問を活用することを入試要項などで事前に公表する——など。最終的に導入を決めた17大学が連名で昨年10月、全国の約400大学に参加を要請する文書を送った。

 大学の教員にとって、問題作成に要する負担は重い。国立大の場合、教員の中から選ばれた委員が、過去に他大学で同様の問題が出題されていないかなどをチェックしながら問題を作る。

 岐阜大では、全教員の約8分の1にあたる約100人の教員が半年近くかけて問題を作っている。その間、研究や授業がほとんどできなくなる教員もいるという。

 90年代以降、入試方法の多様化や受験機会の複数化が多くの大学で進み、問題の種類や作成回数が増加。教員の負担が増し、数年前からは大手予備校に問題作成を外注する大学も現れていた。 現在、全国の約50大学から回答が岐阜大に届いているが、「参加したい」とする回答と、「今回は見合わせる」という回答が半々ぐらいだという。大阪大の入試課担当者は「現在検討中。大学にとってメリットのある話だとは思うが、一部の大学だけでなく、大学全体として取り組むべき課題だという考え方もあるだろう」。京都大の入試企画課担当者も「現時点では未定」という。

 受験現場の反応は様々だ。「難問・奇問が減り、良問に当たるケースが多くなる。受験生にとって、的を絞りやすくなるメリットもある」(予備校関係者)と期待を寄せる声がある一方、「受験生が過去問あさりに走り、過去に受験した大学によっては、受験者間で不公平が生じる可能性がある」(大阪府内の私立高教員)。

 関西のある私立大幹部は「大学の入試問題は、『どんな学生に来てほしいか』という大学から受験生へのメッセージでもあり、安易に過去問に頼りすぎる傾向が生まれるとよくない」と話す。

     ◇

「大学入試過去問題活用宣言」の共同提案大学

 【国立】旭川医科大▽弘前大▽岩手大▽秋田大▽山形大▽宇都宮大▽お茶の水女子大▽山梨大▽信州大▽静岡大▽岐阜大▽滋賀医科大

 【公立】岐阜薬科大▽名古屋市立大

 【私立】桜美林大▽順天堂大▽日本医科大

http://www.asahi.com/life/update/0128/007.html