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2007年01月26日(金) 00時00分

命救う募金に希望を託し 東大和の橋本さん朝日新聞

 日本では不可能な心臓と肝臓の同時移植を目指す東京都東大和市の大学生、橋本万里(ばんり)さん(21)を支援しようと、「万里君を救う会」が25日、募金活動を始めた。米国の大学病院から移植の内定を得ているが、保険などが適用されないため、病院と医師に支払う額だけで200万ドル(約2億4千万円)に達する。現在、移植への募金を取り巻く状況は厳しいが、生存への可能性に向け、公開募金に踏み切った。(大隈崇)

 万里さんの父で会社員の健さん(57)、母の千穂さん(53)らが25日に記者会見し、募金への理解を求めた。

 万里さんは心臓に二つある心室が一つしかない「単心室」という重い心臓病を抱えて生まれた。6歳の時、静脈と動脈の血が混じらないようにする「フォンタン手術」を受けたが、高校1年の冬に不整脈が見つかり、2年後には別の病院で「心不全」と診断された。

 心臓移植が必要な状態で、主治医は「今の状況では半年もつと保証できない」としている。合併症で肝臓も病み、日本では技術的に難しいとされる心肝同時移植しか助かる道はないという。

 万里さんは5年かけて高校を終えると、06年4月に駿河台大学法学部に入学した。病状が悪化して2週間しか通えなかったが、「法律家になって自分と同じようにハンディを持った人間がもっと生きやすい社会に変えていきたい」と復学をあきらめていない。

 米国のピッツバーグ大学病院での手術受け入れは内定している。だが、病院側から示された手術費は「200万〜300万ドル」にのぼった。東京女子医科大の黒沢博身・主任教授は「高価な血液製剤が大量に必要になる。決して法外な額ではない」と説明する。

 募金には難しい面もある。昨年、三鷹市の女児が米国での心臓移植を目指して募金を始めると、ネット上で「死ぬ死ぬ詐欺」「募金ビジネス」などと中傷された。誤解に基づいた批判が殺到したうえ、家族のプライバシーも暴露されていった。

 橋本さん一家もそうした状況は知っているが、息子を救う唯一の道が募金だった。千穂さんは言う。「『そんなに生きたいか』というのは健康な人だからこそ言えること。自分の家族に置き換えてみてほしい。移植を実現させることで息子の幸福と共に、先天性の病気に悩む他の子どもたちの希望になれば」

 募金の目標額は2億5600万円。救う会では3〜4月ごろまでに病院に支払う保証金(約7千万円)と渡航費を工面し、万里さんを渡米させたいとしている。

 募金の振込先は救う会(042・306・8251)のホームページ(http://www.banrihelp.com)に掲載している。

http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000000701260001