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2007年01月26日(金) 22時43分

再建途上、「看板」白物に傷 三洋洗濯乾燥機発火朝日新聞

 経営再建中の三洋電機の製品で、再び消費者の信頼を損ないかねない「欠陥」が明らかになった。点検・修理済みの洗濯乾燥機による火災事故の発覚は、昨年末に起きた携帯電話向けリチウムイオン電池の過熱・破裂事故の対応に追われていた矢先だった。しかも、経済産業省に指導されるまで公表せず、過熱する部分に引火の可能性がある部品を使う甘さも露呈。「モノづくり」の力量だけでなく、企業統治のあり方も問われている。

■希薄な責任感

 安全への考え方に甘さはあったが、設計ミスではない——。記者会見した有馬秀俊取締役の説明は、三洋の迷走ぶりを象徴するように二転三転した。会見で一度は設計ミスを認めたが、1時間後に2度目の会見を開いて否定。消費者の安全に直結する家電メーカーの責任感の希薄さが浮かび上がった。

 三洋が出火の原因としたのは、先端に電子回路に差し込む端子が付いた電線。大手部品メーカー製で、銅線と端子の接続が不十分な不良品が混じっていた。大量の電流が流れて過熱する恐れがあるという。

 問題の機種の場合、過熱した部品を覆うカバーが不燃性素材ではなかったことが出火という事故を引き起こした。この部品は他メーカーの家電製品にも大量に使われているが、他に発火の事例は報告されておらず、三洋の素材の選択に問題があったとみられる。

 今回の事故で明らかになったのは、三洋の設計部門が不具合の恐れを読み切れず、起きた際の被害を最小限にとどめるために、不燃性のカバーにするという「基本動作」をおろそかにしていたという事実だ。

■イメージダウン必至

 不振が続く三洋の家電部門にあって、洗濯乾燥機は数少ないヒット商品の一つ。今回の事故機とは異なるが、最上位機種で人気のある「アクア」の信頼も揺るがしかねない。

 アクアは、節水機能やオゾンによる殺菌・消臭などが評価され、松下電器産業の「ヒートポンプ斜めドラム」などと並ぶ売れ筋だ。「環境に優しい企業」を旗印に再建を目指す三洋にとって、ブランドイメージの中核をなす「看板商品」ともいえる。

 三洋は昨年12月、洗濯機製造の主力拠点だった滋賀工場(大津市)を閉鎖、製造を東京製作所(群馬県大泉町)に移管した。草創期から洗濯機を作り続けてきた滋賀工場は「古参社員にとっては『聖地』的な存在」(同社幹部)。OBらの強い反発を押しての移管は、アクアの増産が最大の狙いだった。

 手狭な滋賀工場では増産がままならず、量販店からの大量注文に応じきれないこともあった。担当役員の一人は東京移管直前に「広い東京でどんどんアクアを作り、松下から洗濯乾燥機のシェア1位を奪いたい」と意気込んだ。

 その矢先の問題発覚。「すでに万全の対策を講じており、他の製品に同様の問題はない」としているが、設計時点での安全対策の甘さが事故の一因だけに、製品のイメージダウンは避けられない。

 イメージの悪化が他の商品にまで波及する事態になれば、再建の先行きに暗雲が立ちこめかねない。

http://www.asahi.com/business/update/0126/157.html