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2007年01月25日(木) 00時00分

黒食品づくし 黒豆、黒蜜(みつ)ぱん、黒ごませんべい、さらには黒まめ納豆も。「黒」を売り物にした食品や飲料水が多く発売されている 東京新聞

 黒酢、黒豆、黒茶、黒米、黒豚、黒牛…。最近、やたらと「黒」を強調した食品が目に留まりませんか。黒いなりずし、黒ワインなんてものも。黒は必ずしも食欲をそそるようには見えないが、なぜ今、持てはやされるのか。ちまたの「黒」を追った。

 東京・JR新橋駅の改札を出ると、目の前に昨年オープンした「黒酢バー」の看板が。

 黒酢&五穀酢、黒酢&ココア、黒酢ビネガーシェイクなど十一種の黒酢ドリンクが並び、中高年男性だけでなく女性会社員でにぎわう。男性会社員(27)は「ダイエットのつもりで、週に一回は飲みに来ます」と話す。

 日本レストランエンタプライズは、ほかにJR渋谷駅、市川駅にも出店。広報室の近藤昌昭さんは「こんなに売れるとは思わなかった。予想の三倍。夏は一日千杯、冬でもその半分以上は売れます」。

 JR東京駅コンコースでは、東京土産としておなじみの「東京ばな奈」の黒いバージョン、ココア入りの「黒ベエ」が飛ぶように売れている。

 羽田空港の売店「BLUE SKY」でも、二年前から「黒いなり」、昨年五月からは「黒しゅうまい」を発売。いなりの付け合わせのたくあんまで黒い。いなりとシューマイの黒には、食用備長炭を使用しているという。たくあんは、カラメルにつけ込んだ。

 同店を経営するJALUX業務チームの狩野博之総括マネージャーは「味を気に入ってくださったのか、順調に売れています」と話す。

 麻布十番にあるアンチエイジングレストラン「麻布十八番」では、黒ワインが人気。フロアマネージャーの鳥羽晋介さんは「フランス産黒ワインは、名前も黒を意味する『ノアール』。女性に人気があります」と語る。

 ペットボトルのお茶戦争の中でも、サントリーの黒烏龍(クロウーロン)茶はヒット商品。同社広報は「昨年五月から十二月までに予想の三倍の約六百万ケースを販売。中高年がターゲットだったが、女性も含め広い層に支持されています」と鼻息が荒い。

 昔から黒米、黒豆、黒ごまなど、黒い食品はあったが、なぜ今「黒」なのか。

 黒酢バーの近藤さんは「黒酢は米酢に比べてまろやか。黒い色は健康にいいというイメージがあり、気分を盛り上げる」という。日本橋高島屋などにある酢の専門店「オークスハート」は「黒酢には、疲労回復や血行をよくするアミノ酸の含有量が多い」と説明する。

 JALUXの狩野さんは「健康ブームだったし、インパクトのあるものを作りたかった。炭は天然ミネラルが豊富で、素材のうまみを引き出す効果もある」という。

 黒烏龍茶は厚生労働省の特定保健用食品(トクホ)として認可されている。サントリー広報は「ウーロン茶中のポリフェノールの色素成分は、脂肪の吸収を抑制する働きがあります。それを増やすと、必然的に黒くなった」と説明する。

 いずれも「健康ブーム」が背景にありそうだ。

 日本色彩研究所の名取和幸研究員は「黒には、恐怖、闇など悪いイメージと同時に、高級感、格式、礼節など良いイメージもある。黒い服も一九八〇年以降はファッショナブルに着るようになった。黒色は健康イメージとして高まってくるとも考えられる」という。

 ただ、食品と血液の関係を研究している菊池マイクロテクノロジーの菊池祐二代表(理学博士)は警告を発する。「黒い食品に含まれるアントシアニンという色素などには血液をサラサラにする作用があるが、他の食品との組み合わせで効果を発揮するものだ。組み合わせによっては逆に害を及ぼすこともある。黒成分だけを抽出して、法外な値段をつけるのは問題。薬でも食品でも過剰はよくないでしょう」

 文・吉岡逸夫

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