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2007年01月25日(木) 14時57分

外注偽装で派遣会社が消費税逃れ、神奈川や大阪の4社読売新聞

 人材派遣業務を外注したように装い、消費税を免れていたとして、神奈川、静岡県と大阪府の人材派遣会社4社がそれぞれ消費税法違反(脱税)などの容疑で摘発された。

 4社とも外注先として実体のないダミー会社を設立していた。国の税収の約2割を占める消費税については、国民の関心も高く、国税当局は脱税調査に力を入れている。

 東京、名古屋国税局から横浜、静岡地検に告発されていることが判明したのは、神奈川県秦野市と海老名市、静岡県沼津市の「AA TOPIC」という同一の社名の3社と佐藤友行前社長(48)。

 関係者によると、3社は実際は自社の従業員を取引先に派遣していたのに、複数のダミー会社に外注して労働者を派遣したように偽装。2006年3月期までの4年間に計約2億3000万円の消費税を免れていたという。3社はダミー会社を設立しては清算を繰り返し、脱税が発覚しないよう工作していた。

 民間の信用調査会社などによると、3社は大手自動車や精密機械のメーカーなどに対し、工場労働者や事務員として約1000人を派遣。「エリアスタッフ」に社名変更した沼津市の会社の幹部は、「税務調査を受けたのは事実だが、詳しい内容は佐藤前社長しか知らない」と話している。

 一方、大阪地検特捜部は25日、消費税約8200万円を脱税していたとして、大阪府忠岡町の人材派遣会社「インテル」の社長藤原誠二容疑者(48)を逮捕し、大阪国税局と合同で捜索に着手した。

 調べによると、インテルは05年6月期までの3年間、実際は自社の従業員を取引先のパチンコ店などに派遣していたのに、ダミー会社に派遣業務を外注したように偽装し、消費税を免れていた疑い。特捜部などは、同社が1998年ごろから、同じ手口で消費税を脱税していた疑いがあるとみている。

 消費税は、事業者が、売り上げにかかる消費税額から、仕入れにかかった消費税額を控除して申告する仕組みになっている。人材派遣業の場合、取引先に自社の従業員を直接派遣して払った給与は控除対象にならないが、他社に派遣を外注すればその費用にかかる消費税については、商品の仕入れと同様に控除できるため、納める消費税が少なくなる。

 4社はこれを悪用し、複数のダミー会社に派遣を外注したように装い、消費税を過少申告していた。また、ダミー会社に消費税の納税義務が生じるため、告発された3社では、資本金1000万円未満の会社は設立後2年間は消費税を納めなくて済むことを利用。ダミー会社を設立しては2年以内に清算することを繰り返し、消費税を免れていたという。

 89年に導入された消費税は、97年から税率が3%から5%に引き上げられ、国の税収に占める割合は、法人税に迫る2割強となっている。04年には免税の基準となる売上高が引き下げられ、納税業者が増加。最近は消費税率アップも議論されており、国民の関心も高い。こうしたことを背景に、国税当局では消費税脱税の調査を強化し、05年度は過去最高の10件を検察当局に告発。その半数近くを人材派遣会社が占めたとみられる。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070125it06.htm