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2007年01月24日(水) 00時00分

映画監督の山田洋次さんに取材した時の言葉が頭に浮かぶ。「恋… 東京新聞


 映画監督の山田洋次さんに取材した時の言葉が頭に浮かぶ。「恋人に裏切られるのは人間の悲しいさがとして仕方がないが、政治の裏切りは人間の心の奥底に染み込んで退廃的な気持ちにしていく」。自社さ連立の村山政権誕生についてがテーマだった。信頼に背く政治への深い嘆きを感じた▼政治は今も人々の信頼に応えているとは言い難い。政権の枠組みや政策論以前の問題として閣僚や参院副議長、政党幹部ら政治家の不透明な資金の流れが新聞をにぎわしている▼背信は政治の専売特許ではない。今や「背信列島」の感さえある。北海道北見市での都市ガス漏れは、何の落ち度もない住民の命を奪っている。ガス警報器が作動したのに適切な対応が取られていない▼不二家では埼玉工場で消費期限切れの食材使用が発覚した後も、ずさんな商品管理が次々と明らかになっている。体質の問題ととらえるしかない。名古屋市発注の公共工事をめぐる談合事件では、大手ゼネコン四社が「談合決別宣言」をした後の入札が疑惑に包まれている。宣言をもはや信用できない▼関西テレビが制作し、フジテレビ系で放映された「発掘!あるある大事典2」の捏造(ねつぞう)では、請け負った番組制作会社が過去に別の番組で捏造事件を起こしていることが分かっている。テレビ局のチェック体制の甘さは弁明の余地がない▼背信への嘆きは深く退廃的な気持ちになりそうだが、ここは何とか堪(こら)えたい。背信の「罪」の重さを日々学んでいる。これ以上繰り返すほど日本人が愚かだとは思いたくない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20070124/col_____hissen__000.shtml