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2007年01月23日(火) 15時03分

中台因縁の「光華寮」明け渡し訴訟決着へ 提訴後40年朝日新聞

 日本と中国、台湾の間の摩擦の火種となってきた京都市内の留学生施設「光華寮」をめぐる明け渡し訴訟について、「中国の代表権を持つ政府はいずれか」についての意見を求める通知が最高裁から訴訟代理人に届いたことが23日、わかった。1967年の提訴から40年を経た訴訟は、上告から20年ぶりに審理入りしたことになる。近年は中華人民共和国政府が中国国民を代表することは国際政治学で通説となりつつあり、最高裁では、台湾側勝訴の二審判決がこの論点を中心に再検討される見通しとなった。外交上の波紋が起きるのは必至だ。

 光華寮訴訟では、台湾の所有権を認めて中国を支持する寮生に立ち退きを命じた大阪高裁判決が、「二つの中国を認めるものだ」として中国側の強い反発を招いた。以来、最高裁は事実上「封印」してきた。

 訴訟代理人ら関係者の話を総合すると、最高裁第三小法廷(藤田宙靖(ときやす)裁判長)が今回、代理人に求めたのは、「この訴訟を遂行すべき中国の代表権を持つ政府は中華人民共和国と中華民国のいずれか」についての意見だ。

 この訴訟は、中華民国政府(台湾)が原告となって起こした。中華民国を承継した中華人民共和国が訴訟を遂行すべきだと最高裁が判断すれば、台湾は訴訟活動を中国に受け渡さなければならなくなる。

 台湾は文化大革命最中の67年、中華人民共和国を支持する寮生8人を相手に明け渡しを求め提訴。係争中の72年、日中国交正常化で日本は中国を唯一の合法政府として承認し、台湾と断交した。

 一審・京都地裁は77年、「日中国交正常化で、中国の公有財産である寮の所有権は中華人民共和国に移った」として台湾を敗訴させたが、大阪高裁が82年、一審判決を取り消し、審理を差し戻した。差し戻し後一審(86年)では台湾が勝訴。中国側は日中外相協議などで批判したが、87年の大阪高裁判決も、台湾の所有権を認めて寮生らの立ち退きを命じ、寮生側は上告した。

 このため、中国側は反発を強め、故・●小平氏(●は登におおざと)が日本の姿勢を批判。日中首脳会談でも「光華寮訴訟」が取り上げられて外交問題化した。日本政府側は「三権分立」の原則を強調。「政治は司法に介入できない」と理解を求めてきた。

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 〈キーワード:光華寮〉 京都市左京区内の京都大にほど近い住宅街にある鉄筋5階建て、延べ約2000平方メートルの在日中国人留学生寮。戦時中、京大が民間会社から借り上げた。戦後、中華民国が買収した後、寮生が自主管理を始めた。中華人民共和国が49年に成立した後の52年、戦時中に続いてそのまま留学生寮として使えるよう台湾が購入した。寮には現在、留学生ら数人が暮らしているとされる。

http://www.asahi.com/national/update/0123/TKY200701230273.html